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その聞き覚えのない声に、星は驚き身を仰け反らせる。
「――誰!?」
「ふふ、そのうち分かるよ……今日は挨拶だけだから……またね!」
驚いてきょろきょろと辺りを見渡している星に、そう言い残して、その声は聞こえなくなった。
っと同時に星が目を覚ました。
「はぁ……はぁ……嫌な夢だったな……でも、あの声は一体誰だったんだろう……?」
そう呟いた星の体は、汗でびっしょりと濡れていた。
ふと横を見ると、隣でエリエが気持ち良さそうに寝息を立てている。
(ちょっと、気分転換に外に出てみようかな……)
星はそう思うとエリエを起こさないように、ゆっくりと布団から出て、テントの外へ出ようとテントから頭を出した――。
その時、偶然階段へと向かうカレンの姿が目に入った。
(……カレンさん。どこに行くんだろう)
星はそう思いながらカレンの背中を見送ると、自分は焚き火の前に腰を下ろした。
もうボスの部屋の前ということもあり、もう見張る必要はないのだろう。前回とは異なり、焚き火の前には誰も居らず、ただ赤い炎がゆらゆらと辺りを優しい光で照らしている。
星は焚き火の前に腰を下ろすと、じーっと揺らめく炎を見つめていた。
(なんだろう……凄く心がもやもやする……)
星は自分の胸に手を当てると、表情を曇らせた。
あんな夢を見た後にカレンの姿を見たからだろうか、その理由は分からないが、物凄く気持ちがもやもやしていた。
その時、カレンに言われた言葉がふと頭を過る。
『お前みたいに遊びで来てる奴がいると、場の雰囲気が乱れて迷惑なんだよ』
星はそれを思い出すと、しょんぼりしながら膝を抱えた。
「やっぱり。私がいると……皆、迷惑なのかな……」
悲しそうに小さく体を丸め、掠れそうな声で呟く。
今までも何度も同じようなことを学校で言われてきた言葉だったが、ここまで落ち込んだのは初めってのことだ――思わず星の口から言葉が出る。
「――結構……頑張ってたんだけどなぁ……」
星はここに来るまでの道中のことを思い出すと、無意識の内に涙が頬を伝う。
「だ、だめ……泣いてるところを……誰かに見られたら……だめだよ……」
慌てて服の袖で目を押さえる。だが、涙は止まるどころかどんどん溢れてくる。
しばらくの間、星はそのまま声を殺して泣いていた。
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