理想と現実

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 まあ、カレンが怒るのも無理もない。星のその言動は、取り方によれば『カレンよりも自分の方が強い』という風に言っていると取られていてもしかたない。  その威圧感に一度は気圧されたが、すぐに星の瞳がカレンを捉える。 「いいえ……でも、もしもがあったらいけないと思って!」  星はカレンの目を見て勇気を振り絞り、そう声を上げる。 「ふん。なら、お前が一人でその敵を倒せると……?」 「……そ、それは……」  そう言われた星は、それ以上何も言えなくなった。  確かにカレンの言う通りだ。カレンは星よりも圧倒的に強い。それはスケルトン達との戦闘を見ていても良く分かっていたはずだった。  カレンは俯いたままの星を「ふん」と鼻で笑うと、その横を無言のまま通り過ぎる。 「――待って下さい!」  星は俯きながら叫ぶと、表情を曇らせながら言葉を続けた。 「……カレンさんはどうして私を嫌うんですか? もし、私に悪いところがあればなおします。だから――」 「――お前はまたそうやって……そこが、俺は気に食わないんだよ!!」  星が話している途中にカレンが叫んだ。  その声に驚き目を丸くさせ、呆然とカレンの顔を見つめている。 「お前のその誰にでも好かれようとするその姿勢が、俺は一番気に触るんだよ!!」 「……えっ?」  星は驚きのあまり言葉も出ずに、その場に立ち尽くしている。  そんな彼女にカレンは遠慮することなく、言葉を続けた。 「お前は自分が傷付きたくないだけの臆病者だ! そうやって、笑顔を振りまいていれば誰かが助けてくれる――本当はそう思っているんだろ? この卑怯者がッ!!」 「ちがっ……私は、そんなこと。考えたこともない……です」  星はそう言って俯いたまま、肩を落としている。  だが、内心では『そうかもしれない』という思いがあった。そこを突かれ、星も思わずたじろぐ。
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