理想と現実

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「――えっ? どこに……」  次の瞬間。カレンは星の目の前に現れると、拳を構えている。 「――なっ!?」 「遅いな……はああああああッ!!」   その咆哮と共に拳が星に襲い掛かる。  星は慌てて、持っていた剣を突き出してガードの体制に入り『防げる!!』そう確信した直後、星の体は吹き飛ばされていた。 「きゃあああああああああッ!!」  吹き飛ばされた星の体は遠くの壁に、勢い良く叩きつけられ地面に倒れ込む。 「うっ……」 (ど、どうして……? 確実に剣で防いだはずなのに……)  星は混乱した頭で、必死に何が起きたのかを考えていた。  その時、星の視界に自分のHPバーが見る見るうちに減っていくのが見えた。  その減少は著しく青かったゲージは黄色になり、遂には赤になってしまった。 (あっ……ダメ。まだ、謝ってもらってないの……このままじゃ、負けちゃう! 負けたくない……止まって!!)  しかし、星の思いは虚しくHPは残り1という表示だけ残して、星の視界には【LOSE】という敗北を告げる文字が表示された。  表示を確認した星は、がっくりと肩を落とす。 (――勝てなかった。ごめんなさい……エリエさん)  星はそれを倒れたまま、虚ろな瞳でその表示を見つめている。 「ふん。口ほどにもなさ過ぎて、罵る言葉もないな」  星は無言のままその声の方を見上げると、カレンが腕を組みながら仁王立ちしているのが目に入った。 「お前は弱い――いや、それを通り越して無様だな。一度も剣を振るわずに負けるとは……そういえば、エミルだったか? あの女もオロチとの戦闘で真っ先に倒されてたなぁ……師匠はあの女を気にかけていたが……どうせ、あの女が師匠に色目を使っていたんだろうな。そういえば、体付きも顔もそれっぽいしなー」 「――くっ……ゆるさない……もう、絶対に許しません!!」  その言葉を聞いて徐ろに立ち上がると、星は烈火の如く怒りだしカレンを鋭く睨みつけた。 「もう一度勝負です!!」 「いいだろう。どうやら……まだ痛めつけられたいようだな!!」  星の闘志に眉をひそめ、拳を構え直すカレン。 「はああああああああああッ!!」  星は剣を構えると、カレンに向かっていった。  カレンはそれを不敵な笑みを浮かべながら、向かってくる星を待ち構えている。
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