理想と現実

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 星は剣をがむしゃらに振り回しながらカレンを攻撃するも、その攻撃はカレンに掠りもしない。  だが、当たらないと分かっていても。心の中から湧き上がってくる怒りをぶつけずにはいられない。 「はっ! このっ! このぉ~!!」 「どうした? 攻撃に正確性が無いぞ? そんなじゃ俺に一撃食らわせるなんて夢のまた夢だなッ!!」  星の必死の攻撃をカレンは涼しい顔で攻撃をかわしている。  それもそのはずだ。ゲームではどれだけやり込んだかでプレイヤーの力量が決まる。  攻撃スキルのないフリーダムでは良い装備と実戦経験で得た体の使い方が勝敗を決めると言っていい。  フリーダムの中で剣士はバランス。変わって武闘家がスピードに優れている。  更に前回のアップデートで装備の重量によって俊敏性のステータスが上昇する仕様に変更されていた。  このことは、一部の人間しかまだ知らないことだ――。  実はカレンが最初にガントレットを外したのは、この効果を最大に活かす為の彼女の作戦だったのだ。そうとは知らず。星は剣に鞘を付けてしまった為、重量が追加され攻撃速度とスピードを落としてしまっていたのだった。  ただでさえ剣を持たない分、重量の関係で武闘家はスピードと攻撃速度が圧倒的に高い。それが近接戦闘で、スピードという圧倒的なアドバンテージを生み出している。  カレンは必死になって剣を振るう星を、あざ笑うかのように口元に笑みを浮かべる。 (この戦いは最初から俺に有利なんだよ。お前がどんなに努力しても足の遅い剣士では……)  地面を強く踏み締め。 「俺には絶対勝てないんだよ!!」  カレンは星の瞬時に懐に飛び込むと、数発の打撃を打ち込んだ。  星は地面を派手に転がりそして止まる。 「いっ……うぅぅ……」  星は腹部を押さえながら、苦しそうにうずくまっている。  まあ、一瞬とはいえ即座に数発の打撃を加えられれば無理もない。HPゲージも『1』になり、星も立ち上がる様子もない――。  カレンは「ふんっ」と息を漏らすと、倒れている星に冷たい視線を送り。その場を去ろうとしたその時、星の声が響く……。
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