理想と現実

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「……ま、まだです。まだ……負けて……ません!」 「なっ、なんなんだよ。お前は! どうしてそこまで立ち上がるんだ! 元々お前には関係ない事だろう!?」  カレンは体を左右にふらふらさせながらも、必死で立ち上がってくる星に向かって叫ぶ。 (普通ならもう立ち上がるどころか息をするだけでも苦しいはずなんだぞ!? なぜだ……なぜあいつは立っていられる!!)  カレンはそう思うと、倒れても倒れても何度も立ち上がってくる星に、恐怖にも似た感情を覚えた。  その時、星がゆっくりと口を開く。 「……関係なくない」 「えっ?」 「はぁ……はぁ……2人は……私にとって命より……大事な……お友達なんです! それをばかにしたあなたを……ぜっ、たい……許さない!!」  星は怒りに満ちた鋭い眼差しをカレンに向ける。  その瞳を見てカレンは混乱した様子で数歩後ろに後退る。額からは焦りからか汗が滴り落ちた。 (なんなんだこいつは……どうして人の為にそこまでできる。手は抜いてない――そんなボロボロの体で、どうしてまだ戦意を失わない!!)  カレンの体はなんとも言えない恐怖に震え、よろよろと近づいてくる星を見た。 「――くっ、来るな……来るな……来ないでくれッ!!」  カレンは更に数歩後退りしてその場に座り込んで頭を抱えた。 「俺が悪かった。ダメだ……来ないでくれ! 愛……もう俺を許してくれ!!」     カレンは取り乱した様にそう叫ぶと怯えた様子で「許してくれ」という言葉を念仏の様に繰り返し、その場にうずくまっている。  そんな彼女を星は不思議そうに見つめていた。
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