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大きな爆発音が辺りに響き渡った直後。メルディウスの攻撃をまともに受けた崖が音を立てて崩れ始めた。
崖の崩落の影響で大量の土砂が舞い上がり、メルディウスの視界を完全に遮った。
彼は舞い上がった砂煙で視界を奪われているのを嫌ったのか、避ける様に素早く後方に移動する。
数十メートルはあった崖が、地響きを鳴らしながら大きく手前に崩れてくる土砂を、軽々と避けるとメルディウスは持っていた得物を肩に担ぐ。
「――ふんっ、呆気ないもんだな……しかもあの土砂の量じゃ、十中八九HPは残ってねぇーだろ……じじい。成仏しろよ」
っとメルディウスは舞い上がった砂埃を見つめ、勝ちを確信した様にそう呟く。よく見ると、彼の持っていた武器が大剣ではなく、大斧の形に変わっていた。
メルディウスはその大斧を天に突き上げると、上に上がっていた刃が下りてきて二又に広がり柄の部分を担ってまた大剣の形へと戻った。
そう。大剣の柄の部分の両側にも大きな刃が付いていたのには、こういう仕掛けがあったのだ。メルディウスの奇妙な形の武器は、始めから大剣と大斧両方にシフトできるような構造になっていたのである。
「これで俺の固有スキルは、本当に俺だけの物になったわけだ。帰るぞベルセルク……奴を倒した。これで紅蓮にもバカにされなくなるぜ!」
メルディウスはそう呟いてほくそ笑むと、剣を背中の鞘に収めその場を後にしようとした。
っとその直後に、仕留めたと思っていたマスターの声がメルディウスの耳に飛び込んできた。
「――ほう。それがその武器の性能ということか……入れ替わる武器とあの威力。それはトレジャーアイテムだな?」
一瞬驚いた表情を見せたメルディウスだったが、舞い上がる砂煙の中からゆっくりと出てきたマスターを見てすぐに平静を取り戻し、大剣をマスターに見えるように前へと掲げる。
「……ああ、これは戦斧ベルセルクだ」
「儂がギルドマスターをしていた時、その武器をお前は持っていなかった。いつ手に入れたのだ?」
マスターがそう尋ねると、メルディウスはニヤッと不敵な笑みを浮かべながら、彼のその質問に答えた。
「お前が居なくなってからだ――それより俺も聞きたい。どうやってあの攻撃をかわした? 確実に回避できるようなタイミングではなかったはずだ!」
「ああ、このグローブ……いや、これもトレジャーアイテムでな。名を『デーモンハンド』という……」
彼の突き出したグローブには、黒いオーラが巻き付いている。
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