襲来者

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 突然。ディーノに覆い被さられる様にして茂みに押し倒された星とレイニール。 「――痛った……突然何するんですか?」  瞑っていた目を開くと、ディーノの顔が目の前にあった。  顔を真っ赤にして、突然押し倒してきた彼に怒ろうと口を開いた瞬間。ディーノの人差し指が星の唇に付く。 「……えっ? な、なにを!」 「しぃー。静かに……どうやら僕達は狙われてたらしい。いいかい? ここは僕がなんとかする……僕が走ったら、君達はそこの木の陰に隠れてじっとしているんだ。いいね?」  ディーノはそう星の耳元でささやくと、徐に近くの木を指差した。  星が「はい」と頷くと、にっこりと微笑みを浮かべたディーノが、星とレイニールをその場に残し走った。  星も慌ててレイニールの手を掴むと、近くの木を目指して一目散に駆けていく。  木の陰に入った星はそこからディーノの様子を窺っていた。  その直後、ディーノの周りを5人の黒いローブを着た者達が囲うように現れた。  ディーノは口元に微かに笑みを浮かべ、彼等に物怖じすることなく呟く。 「へぇー。ローブで顔を隠してるなんてフェアじゃないね……それとも恥ずかしいくらいに顔が悪いのかな?」  彼の馬鹿にする様な口調にも、全く彼等は動揺しない。  彼等の態度から、日頃からやりなれている連中と言うことは理解できた。  その直後、ディーノは目の前に漆黒の片手剣が現れ、彼はそれを手に取って体の前に構える。  だが、それは出現したというより、出したというのが正しい。  その一部始終を星は目撃してた。彼は走っている間に最小限の動きで素早くコマンドを操作して、一瞬で得物を出したのだ。  瞬時にその様な動作を取れるということは、彼もまた熟練されたプレイヤーであるのは言うまでもない。   5人の中でもひときは大きな人物が一歩前に出ると、相手を威圧する様な野太い声で告げる。 「私達はお前に用はない……あの娘に少し用があるのだ。引くというのならお前に危害を加えないことを、我々は約束しよう」  忠告なのだろう。まあ、男にも彼が只者ではないと理解したのは間違いない。  だが、その話を聞いてディーノは不敵な笑みを浮かべる。 「なるほどね。あの娘達に用があるわけだ……あいにく僕もあの娘達に興味があってね。せっかくの憩いの時を邪魔しないでくれるかい? それに、僕は君達に興味がないんだ……」 「交渉決裂という事か……ならば、貴様を排除してから、ゆっくり娘をいたぶる事にしよう……」  すると、その男は剣を構えたかと思うと、素早くディーノに斬り掛かってくる。
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