名御屋までの道中

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 直後、マスターの目がカッ!と見開き、お椀を持つ手が震え出す。 「――う、うまいだと!?」 「見た目と違ってお味噌汁です!!」  マスターと少女が驚きの声を上げた。  白雪は満足そうに笑顔を見せると「当然です」と頷いた。  ほっと胸を撫で下ろし、手の中の器から隣に座っていたメルディウスに視線を移す。 「うまいではないか、なあ、メルディウス!」 「…………」  マスターは彼の背中を叩くと、メルディウスの体はゆっくりと傾きバタッと前へと倒れた。衝撃のあまり、その場に立ち上がったマスター。  よく見ると地面に倒れたメルディウスは白目を向いたまま、口から泡を吹いている。  マスターがふと白雪の方を振り向く――。 「食べながら寝るなんて、ギルマスも随分お疲れのようですね」  優しい声音でほくそ笑みながらそう呟く白雪。  その悪魔の様な不気味な笑みを見たマスターは一度深く深呼吸をすると「風呂に入ってくるかな」と呟き、その場を後にした。  翌日――不機嫌そうに馬に跨ったメルディウスが呟く。まあ、理由は聞かなくても分かる気がするが……。 「全く昨日は酷い目にあったぜ」 「ほんとだよ。結局カレーを食べれなかったしさ」  メルディウスに続いて、横に付いた小虎も眉にしわを寄せてそう呟く。  あの後、2人は白雪にテントの中にまるで物でも扱うように投げ込まれ、最悪な一夜を過ごした。  結局、メルディウスは自分が企画した風呂にも入れず。小虎は風呂どころか、大好物のカレーすら食べることができなかったわけだ。  そんな2人をなだめるように紅蓮が彼等の隣に馬を付け。 「まあまあ、よく分かりませんが、機嫌を直して下さい。カレーならまた作ってあげますし」 「ほんと!?」  小虎は嬉しそうに聞き返すと、紅蓮も静かに頷いた。  メルディウスは大きなため息をつくと少女の方を向く。 「そういえば、お前はどうするんだ? このまま一緒に行くわけにもいかんだろ。もし行くあてがないってんなら俺達のギルドに来るか?」 「そうですねぇー。なんだか楽しそうな人達ばかりだし。それもいいかなぁー」  少し考え少女がそう口にすると、メルディウスは嬉しそうに笑った。  ギルドのメンバーが増えるのは、大手のギルドでも同じこと様だ――。
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