129人が本棚に入れています
本棚に追加
/1838ページ
直後、マスターの目がカッ!と見開き、お椀を持つ手が震え出す。
「――う、うまいだと!?」
「見た目と違ってお味噌汁です!!」
マスターと少女が驚きの声を上げた。
白雪は満足そうに笑顔を見せると「当然です」と頷いた。
ほっと胸を撫で下ろし、手の中の器から隣に座っていたメルディウスに視線を移す。
「うまいではないか、なあ、メルディウス!」
「…………」
マスターは彼の背中を叩くと、メルディウスの体はゆっくりと傾きバタッと前へと倒れた。衝撃のあまり、その場に立ち上がったマスター。
よく見ると地面に倒れたメルディウスは白目を向いたまま、口から泡を吹いている。
マスターがふと白雪の方を振り向く――。
「食べながら寝るなんて、ギルマスも随分お疲れのようですね」
優しい声音でほくそ笑みながらそう呟く白雪。
その悪魔の様な不気味な笑みを見たマスターは一度深く深呼吸をすると「風呂に入ってくるかな」と呟き、その場を後にした。
翌日――不機嫌そうに馬に跨ったメルディウスが呟く。まあ、理由は聞かなくても分かる気がするが……。
「全く昨日は酷い目にあったぜ」
「ほんとだよ。結局カレーを食べれなかったしさ」
メルディウスに続いて、横に付いた小虎も眉にしわを寄せてそう呟く。
あの後、2人は白雪にテントの中にまるで物でも扱うように投げ込まれ、最悪な一夜を過ごした。
結局、メルディウスは自分が企画した風呂にも入れず。小虎は風呂どころか、大好物のカレーすら食べることができなかったわけだ。
そんな2人をなだめるように紅蓮が彼等の隣に馬を付け。
「まあまあ、よく分かりませんが、機嫌を直して下さい。カレーならまた作ってあげますし」
「ほんと!?」
小虎は嬉しそうに聞き返すと、紅蓮も静かに頷いた。
メルディウスは大きなため息をつくと少女の方を向く。
「そういえば、お前はどうするんだ? このまま一緒に行くわけにもいかんだろ。もし行くあてがないってんなら俺達のギルドに来るか?」
「そうですねぇー。なんだか楽しそうな人達ばかりだし。それもいいかなぁー」
少し考え少女がそう口にすると、メルディウスは嬉しそうに笑った。
ギルドのメンバーが増えるのは、大手のギルドでも同じこと様だ――。
最初のコメントを投稿しよう!