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「そうか! なら白雪。この子を千代に送って行ってやれ!」
「……仕方ないですね。了解です。ギルマス」
白雪は不満を小さく頷くと白雪が後方にいた少女の馬の隣へと来た。
その時、黙っていた少女が徐ろに口を開く。
「あの、私も一緒に行っちゃダメですか? というか、行きたいです!」
少女は懇願すると、メルディウスに熱い視線を向けた。
だが、これから四天王のバロンの元へと行くのに、装備も揃えていない初心者プレイヤーを連れていくことに、メルディウスは躊躇せざるを得なかった。
それもそうだろう。バロンの固有スキルは広範囲に影響を及ぼすタイプの能力で、しかも数千の兵士は全てが操るプレイヤーのレベルと同じ強敵。
つまりはバロンのレベルが100ならば、その傘下の兵士達も同じ100ということだ。それが数千を超えるほどいるのであれば、さすがのメルディウス達でも守りきれる保証はない。
メルディウスはしばらく考える素振りを見せ、真剣な顔でもう一度彼女に尋ねた。
「本当に行くのか? 俺達は守ってやれるか分からないぞ?」
「もちろんです!」
考える素振りすら見せずに、直ぐ様返事を返した彼女の眼差しと熱意に押されたのか、メルディウスは頷き叫んだ。
もしもここで少しでも彼女が躊躇すれば、有無を言わさずに白雪に千代へと送り返させるつもりだったのだが、決意が決まっているのならば、これ以上言うのも野暮というものだろう……。
「よし! なら付いて来い! だが、ギルドに入るにはギルドのあるホームタウンに戻る必要があるからな。この旅の間にお前がどういう奴なのかしっかり見せてもらうぞ?」
「はい! 頑張ります隊長!」
「――ふっ、隊長か……悪くねぇな」
メルディウスは彼女の『隊長』という言葉が満更でもなかったのか、口元に笑みを浮かべると、右腕を頭上に高らかに突き上げて大きく叫んだ。
「よっしゃー、野郎ども! 俺に付いて来いやぁー!!」
「「おー!!」」
少女と小虎はその声に腕を高く掲げ、先に馬を走らせていったメルディウスの後を追う。
紅蓮と白雪は顔を見合わせると、ため息をつきながら呟く。
「「野郎じゃないです」」
彼等のテンションについていけない2人は、不機嫌そうな顔をしながら馬を出した。
マスターはその様子を呆れ顔で見ると、額に手を当てながら大きなため息をついた。
「はぁー。こんな事で名御屋まで持つのか、不安だ……」
そう呟くと先に森の中へと進んでいったメルディウス達を追いかけるように、馬の手綱をしならせ馬を出した。
マスター達6人は朝日を受けキラキラと輝いている森の中へと、吸い込まれるように小さくなっていく。
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