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それからしばらくの間、沈黙が続いた。
沈黙の中、星とレイニールのいた部屋の扉が開いて、そこからある人物が部屋の中に入ってくる。だが、布団の中に頭まですっぽりと潜っている星はその人影に気付くことはない。
すると、今度はレイニールの方から問い掛けてきた。
「主は、皆の事は嫌いか?」
「ううん。大好きだよ。でも……」
「……でも?」
星はしばらく考えるように間隔を空け、徐に言葉を続けた。
「――このまま。皆と一緒に居て良いのかなって思うんだ……エミルさんはああ言ってたけど……でも、今日襲ってきた人達は、私を狙ってきてたみたいだし。私はここに居ない方がいいのかなって……」
「ふ~ん。やっぱりね。そんな事を星は考えてたんだぁ~」
「――ッ!? その声はエリエさん!?」
星が慌てて布団から顔を覗かせると、そこにはにやにやと笑みを浮かべているエリエと申し訳なさそうに俯いているレイニールの姿があった。
おそらく。レイニールはエリエが側に居ることを黙っているようにと口止めされ、しかも横から代弁させられていたのだろう。
星は再び布団を頭まで被ると、黙りを決め込んだ。
まるでカメが甲羅の中隠れた様に、頑なに出て来ようとしない星を見て、エリエはため息をつきながら、今度は自らベッドの端に腰を下ろして説得を試みる。
「星はどうしてこのゲームを始めようと思ったの?」
「…………」
質問に答えずに――というか、ゲームを始めた訳を言えない星が黙りを決め込んでいると、構わずにエリエは言葉を続ける。
「まあ、いろいろあるよね~。私はさ、日本人じゃないし。星の気持ちが全て分かる訳でもないけど、これだけは言える」
そう前置きをして、エリエは感慨深げに部屋の一点を見つめ、微笑を浮かべた。
「フリーダムはPK推奨じゃないし、個人のスキルがそのまま戦闘に反映されるでしょ? 私も始めはゲームというより、スポーツ的なノリで始めてたし。それと何より、自分で作ったお菓子が食べ放題と言う事が、最後の決めてだったんだけど……でも今は――」
照れくさそうにエリエは布団の上から、星の体に手を置いて優しく語り掛ける。
「――色々な出会いがあるからなんだよ? こうして、外国の人とも自動翻訳機能で会話ができる。だから星とも会えたし、エミル姉やデイビッドとも会えた……それが私はすごく幸せ……」
優しく微笑みを浮かべると、布団の中にいる星の体を優しく撫でる。
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