2人で外出

3/35
129人が本棚に入れています
本棚に追加
/1838ページ
「星はこんなに小さいのに偉いよ……富士のダンジョンでは逃げないで戦って、私達を助けてくれたでしょ? 私が星と同じ歳くらいの時には、とてもじゃないけど考えられなかったよ。普通にわんわん泣いてなんの役にも立たなかったと思う……」 「そうだぞ主。我輩も、あそこで主と始めて顔を合わせられたのじゃ! ずっと声を掛けてやっとの思いで、主がスキルを使ってくれたおかげじゃ!」  エリエの言葉に続けるように、便乗したレイニールが力強く頷く。  元々は『竜王の剣』と言う一つの装備アイテムでしかなかったレイニールが実体化できたのは、間違いなく星のおかげだ――レイニールもこれだけは言わなければならないと感じたのだろう。  星は布団の中で小さく呟く。 「偉くなんてないです……」  姿は見えないものの。涙で掠れたその声を聞いて、エリエはにっこりと微笑みながら言った。 「星は偉いんだよ? それはエミル姉だって他の皆も分かってる。今日だって、自分で考えたから出て行ったんでしょ?」  その言葉に反応したのか、今まで微動だにしなかった星の体がぴくんと反応した。  まあ、結果としては大失敗に終わったわけなのだが……。  エリエは天井を見上げると「やっぱり。そうなんだ」と呟くと再び話し始めた。 「人に言われた通りにするのは嫌だもんね……私もそうだよ。私の家は王族で……色々教えられるの。帝王学っていうの? そんな、くだらない事を耳にたこができるくらいに……」 「う~む。それは大変じゃのう」  フリーダム生まれのレイニールに『帝王学』の意味が分かっているのかは分からないが、腕組みしながら仕切りに頷いている。  そんなレイニールを気にかけることなくエリエが言葉を続けた。 「だから、私を普通の人として受け入れてくれる仲間の皆は、私にとって家族みたいなものなの。だからね!」  エリエは星の布団をゆっくりと剥がすと、ベッドの上の星に微笑みかけて言った。 「――星。私にとって、あなたは大事な妹なんだよ?」 「……エリエさん」  星は体を起こすと、そんな優しく微笑むエリエの顔を見つめた。  エリエは星の体を抱き寄せると、耳元でそっとささやく。 「何も気にしなくて良い……迷惑をかけたっていいじゃない。家族なんだもの……もっと私を頼ってよ。私は星が思っているよりずっと強いんだよ?」 「……エリエさん」 「例えどんな事があったって、私が星を守る! それが私の――お姉ちゃんとして、妹にしてあげられる事だと思うから!」  その力強い言葉と眼差しに、星はこくんと頷き返した。  エリエは星をぎゅっと抱きしめると、しばらく2人はそのまま抱き合っていた。
/1838ページ

最初のコメントを投稿しよう!