2人で外出

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(ここって何をする場所なんだろう……)  そんなことを考えながら、ミラーボールをじっと見つめていた星はの耳に飛び込んできた自分とレイニールを呼ぶエリエの声に慌てて返事をする。 「は、はい!」 「どうして我輩の名を呼び捨てにしてるのじゃ! 我輩を呼び捨てにして良いのは主だけじゃ!」  星は空中で激昂して両手を振っているレイニールを抱きかかえると、お店の隅の大きなテーブルに腰を下ろした。  怒りを抑えられない様子のレイニールはブツブツと文句を言っていると、サラザが両手にジュースの入ったジョッキグラスを2人の前に置いた。 「ごめんなさいね~。すぐに終わるから、ちょっとこれでも飲んで待ってて~」 「あっ、はい。ありがとうございます」 「うむ。頂くのじゃ!」  星とレイニールは目の前のグラスを手に取ると、サラザは微笑んで小さく手を振ると、バーカウンターに座っているエリエの方へと戻っていく。  目の前に置かれたジョッキグラスを両手で持ってジュースを飲んで「おいしいね」と、微笑み合っている2人を遠目で見ていたエリエが微笑みを浮かべている。  そんな彼女に、サラザが神妙な面持ちで尋ねる。 「それで、エミルは本気でダークブレッドを攻めるつもりなの?」 「……うん。今朝、星があそこの連中に襲われたらしくて……それが原因だと思う。でも、話では2回目らしいんだよね。星が襲われるのが」  エリエは表情を曇らせて小さく呟く。  それを聞いたサラザは星をちらっと見ると、エリエに顔を近付けて徐ろに口を開いた。 「――でも、あそこの規模は世界でも5本の指に入る組織よ? それを本気で潰せると思ってるのかしら……」 「そうなんだよね~」  エリエはその言葉を聞いて一瞬は難しい顔をしたものの、すぐに脱力しテーブルに両手を投げ出すようにべたーっと倒れ込む。  お手上げと言わんばかりに両手を放り出している彼女の前にサラザがミルクの入ったグラスを置く。  グラスの方をちらっと見遣ったエリエが、再び大きなため息を漏らす。  サラザはそんなエリエを見て不安そうな表情を浮かべている。
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