紅蓮の宝物

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 紅蓮はそんな彼に……。 「そんなの期間限定なんですから当たり前ですよ」  っと、言って笑みを浮かべた。  顔を真っ赤に染めながらメルディウスがそっぽを向く。  そんな2人を横目で見て、微笑みを浮かべていたマスターが続々と自分達の横を通りすぎて行く他のパーティーの人間を横目に徐ろに口を開いた。 「――ほう。やはり人気のようだな。2人共、急がねばボス部屋の前で待たされることになるぞ?」 「は、はい! すみませんマスター」 「全く。うるせぇギルマスだぜ!」  そうこうしながらも、3人はこのダンジョン特有の小鬼やガーゴイルなどのモンスターを撃破しつつ地獄谷を進んでいくと、岩盤の前に2体の鬼の象が棍棒を地面に突き立てる姿で洞窟の両側に立っている広い場所に出た。  おそらく。ここがダンジョンのボス部屋の入り口なのだろう――そこには、もうすでに多くのプレイヤー達が屯っている。  列は二列になっていて、部屋の端の方に溜まっている者達は、まだ来ていないパーティーやギルドのメンバーを待っている者達だろう。  ダンジョンクリアする前ならば、パーティーのリーダーさえそのダンジョン内に居れば、そのリーダーによって召喚してもらうことが可能だからだ。  皆、笑みを浮かべながら仲間達と楽しそうに会話をしている。   「へぇー。意外とそれっぽく造ってやがるな! そう思うだろ? ギルマス!」 「うむ。洞窟の前の像はなかなかの造形だな。だが、入り口に手を掛け過ぎて、入ってからがっかりせんと良いがな」  マスターは険しい顔でそう吐き捨てる。  彼にとってはダンジョンの外見より、出てくるボスの方に関心が強いのだろう。 「大丈夫ですよ。きっと今回は楽しめると思います!」 「なんだ? 紅蓮はいつにも増してやる気だなぁ~。まっ、強ぇーのがきても俺がお前を守ってやるよ!」  メルディウスはニヤッと得意げな笑みを浮かべると、紅蓮の頭を手でぐしゃぐしゃと撫で回す。  不機嫌そうに紅蓮が「またあなたは、私を子供扱いして……」と膨れっ面をして唇を尖らせている。
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