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じっと見つめているデイビッドにカレンが恥ずかしそうに顔を逸らすと、デイビッドも慌てて顔を背けた。
足早に先を進みウォーレスト山脈の中央付近に差し掛かったその時、突如として空を飛んでいた飛竜達が襲い掛かってきた。
その突然の飛竜の行動に、皆驚きの表情を隠しきれず目を丸くさせている。
デイビッドは素早く鞘から刀を抜くと叫んだ。
「どうして、こちらから仕掛けないのに。飛竜が襲い掛かってくるんだ!」
しかし、デイビッドが動揺するのも当然なのだ――ゲーム内のモンスターはAIでコントロールされている。
そして、本来ならば、ここの飛竜達は飛行型のプレイヤーか遠距離から攻撃を加えた者を襲うよう設定されているのだ。
だが、飛竜が自発的に地上に居るプレイヤーを襲うということはあり得ないと言っていい。ということは、何者かがゲーム内のモンスターデータのプログラムを改ざんしたことを意味していた。
本来の仕様とは明らかに異なる飛竜の動きに、その場にいた者達も動揺を隠しきれない様子だった。
しかし、そんなことができるのは、プログラミングに精通している人間しかいない。
問題はそれが運営サイドか、外部の凄腕ハッカーか、あるいはこの事件を起こした首謀者か……このどれかである。
もしも運営サイドが意図的に行っている改ざんであれば、この事件の発生からすでに運営が関わっていることになり、ここに居る全プレイヤーの生命が脅かされことになる。
また、それが第三者であるハッカーの仕業であれば、その人物の介入がどこまでできるかで、今このゲームに閉じ込められている人間達の生命に関わる大問題なのだが、今まで外部からの接触が全くないこの状況でそれは極めて考え難い――っとなれば、犯人はほぼ確定している。
しかし、今は目の前から襲ってくる大きなドラゴンをなんとかするのが先決だ――。
「まともな足場でも厳しいのに今のこの状況では!!」
デイビッドは剣を握り締めながら、口を大きく開けながら向かってくる飛竜を見据えていた。
その直後、デイビッドの目の前を複数の銀色に輝く何かが高速で通り過ぎ、向かってくた飛竜を斬り裂く。
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