ウォーレスト山脈

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 驚いているデイビッドがその何かが飛んできた方向を見ると、そこには指の先に挟んだ何かを投げている孔雀マツザカの姿が飛び込んできた。  銀色のそれはカッターの刃にも見えたが、それにしては大き過ぎる。その形状はまるでカードの様な……。  すると、近くにいたサラザが彼に声を掛けてきた。 「デイビッドちゃん大丈夫よ~。孔雀マツザカはトランプの使い手なの。彼女は現実の方ではマジシャンなのよ~」 「トランプ?」  デイビッドはサラザの言葉を聞いて、良く目を凝らしてその飛んでいる物体を見ると、その飛行する物体は、確かにそれは四角い形をしている。  だが、唯一普通と違うところは、その角が銀色に輝いていることだろう。  そのことをサラザに聞き返す前に、サラザが口を開く。 「もちろん普通のトランプじゃないわよ~。特別製の物で角には刃が付いているの。孔雀マツザカが言うには、回転を加えることで、ナイフなんかよりも良く切れるらしいわよ~」  その無理に高い声を出そうとしているサラザのオカマ口調に、眉をひそめながら小さく頷くデイビッド。  孔雀マツザカは攻撃で襲来してくる飛竜達は、次々にガキの下に斬り落とされ落ちていく。  切り刻まれた破片が谷に落ちていく途中で、光となってキラキラと空に舞い上がる。  その光が背景にあると、黄色いモヒカン頭に背中には大きな孔雀の羽を付けている異様な姿の孔雀マツザカのことが、何故か神々しく見えてしまうから不思議だ――。      孔雀マツザカが6体ほど飛竜を撃破する頃には、周りの飛竜もその場を離れ始めていた。  その飛び去る姿を見つめながら、孔雀マツザカが声を上げた。 「あたーしにかかれば、飛行タイプのモンスターでも余裕ザマス!」 「さすがは孔雀マツザカね~」  サラザは孔雀マツザカの肩を叩くと、にっこりと微笑んで親指を立ててた。  そんな2人にデイビッドが声を掛ける。  彼の表情は、今までとは明らかに違う緊迫した様な感じに変わっていた。 「……サラザさん、これは明らかにおかしい。本来ならば、飛竜が地上の敵を自ら攻撃することはありえないはずなんだ。あいつらは自分の空から自分の攻撃範囲に来る敵しか襲わないはず。それが襲ってきたということは、俺達の動きがすでに敵に知られている可能性が高い。いや、そうじゃなかったとしても、この足場の悪い場所で何度も攻撃を受ければ……」 「ええ、分かっているわ。私も、早くここを離れるのがいいと思う」  デイビッドの問いかけに答えると、サラザは静かに頷き歩き始める。  その後、デイビッドの提案で、一行はウォーレスト山脈を超えたところにある森まで休みなく進むことになった。
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