再会

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「あの……それじゃー、私が試しましょうか?」  その場にいた全員が同時に星の顔を見た。  星は何か間違った事を言ったのではないかと、きょろきょろと3人の顔色を窺う。すると、エミルは呆れた様子で大きくため息をつくと。 「……あのね、星ちゃん。そんなのダメに決まってるでしょ? 本当に死ぬかもしれないのに……誰が試すかとかじゃないのよ?」 「で、でも……試してみないと、本当かどうか分からないですし……」  エミルに怒られても納得できない星は、小さな声でそう反論して静かに俯いてしまう。  それを見ていたデイビッドが、この空気を変えようと口を開く。 「とりあえず、まだ死んだ後に関する情報も少ない。ここは、皆死なない様に気をつける事にすればいいじゃないのか? それよりも、どうやってログアウトするを考えようじゃないか!」  デイビッドのその言葉に、エミルとエリエが顎に手を当てながら真剣な面持ちで考え始める。  そんな姿を見て、周りに合わせるように星も慌てて考える素振りを見せる。  その時、ふとモニターの中で話していた狼の覆面を被った男の言葉を思い出す。 『このゲームのフィールドのどこかに隠しダンジョン【現世界元の洞窟】がある。そこの【現世の扉】を潜れば現実世界へと戻れる。』   あの男の言葉が真実ならば、ダンジョンのどこかに現世の扉があるはずだ。そう考えた星が立ち上がり、自信満々に叫ぶ。 「このゲームの中のダンジョンのどこかにある。現世の扉から出ればいいんじゃないですか!?」  それを聞いた3人は揃って大きなため息をついた。  まあ、それがどこにあるのか分からないから、エミル達はこうして困っているのだ。  星はその反応を見て自分の案がダメだったと察したのか「ごめんなさい」と小さく謝り椅子に腰を下ろした。 
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