富士の遺産

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 突如、ヤマトノオロチの背後から何かが飛び出した。 「覚悟がないのなら敵の前に出るんじゃない! このバカ者があああああッ!!」  その声が星の耳元に飛び込んできた次の瞬間、星の居た場所は跡形もなく吹き飛んでいた。 「そ、そんな……星、エミル姉……」  エリエはその変わり果てた場所を見て、顔面蒼白のまま、その場に立ち尽くしている。  っと、そこにどこからともなく部屋の中に声が響く。 「白い閃光と呼ばれたエミルはこのザマで……スピードに定評のあるお前が、その程度とは……本当に嘆かわしいかぎりだ……」 「どこ!? 誰なの!?」  エリエがその声の主を探すように、辺りをキョロキョロと辺りを見ている。  すると、エリエの背後から声が聞こえてきた。 「――どこを見ておる! 儂はここだぞッ!!」 「……えっ!?」  エリエが慌てて後ろを振り返ると、そこにはエミルと星を担いている黒い道着を着た年配で白い髪を後ろで束ねている男性が立っていた。  その顔を見るなり、エリエは驚いた表情で大きく口を開けてる。 「そんな……あなたがどうしてここにッ!?」 「……それは俺から説明しましょう」  その声の方に目をやると、そこにはエリエと同い年くらいの少女が立っていた。  髪の色は黒くショートヘアーで、その格好は年頃の女の子というにはあまりに質素だった。  上着は外見より動きやすさを重視し紺色の袖の胸元の開いた短めの服に、下も茶色いズボンを履いている。  盛り上がった胸元からはさらしが見えていた。おそらく、戦闘で邪魔にならないように大きな胸を潰しているのだろう。だが、その喋り方と飾り気のない風貌から、男と間違われてもおかしくはない。
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