覆面の下の企み

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               * * *  各ギルドマスター達との話し合いを終え、すぐのことだった――城の屋根の上。マスターが月を見上げていて、その手には盃が乗っている。  感慨に耽る様子で夜空を見上げているマスター。 「……まさに絶景だな」  空を流れる雲の中に浮かぶ丸い月から差す光が、手にある盃の中に映り込んでいた。   っとその時、盃の中に映し出された月が揺れる……。  すると、そこに彼の横にメルディウスが現れた。頭を掻きながらメルディウスは少し呆れながらに言う。 「こんな場所まで呼び出して、何かと思えば酒盛りかよ。明日戦闘だってのにいいご身分だな!」 「ふん。まあ、お前も一杯やるといい」  マスターの差し出した盃を受け取り、メルディウスはその場に胡座を掻いて座る。  その後、マスターが笑みを浮かべ盃に急須に入った無色透明の液体を並々と注ぐ。  自分の手に持っていた盃をメルディウスの盃に近付け掲げると、それを一気に飲み干す。  メルディウスも訝しげに眉をひそめながらも、持っていた盃を口に運ぶ。 た  っと、その盃を一口呑んだ直後。彼が固まった様にその手を止めた。  それもそのはずだ。その盃に注がれていた液体は酒ではなく水……つまり水盃だったのだ――。  驚いた様にマスターの方に目をやると、彼は微笑みを浮かべ静かに頷く。  水盃――これが意味するのは今生の別れになると、覚悟した時に酌み交わすもの。これが何を意味しているのか、メルディウスにはなんとなくマスターの考えが分かった気がした。そして、ここに彼が自分を呼んだ意味も……。  マスターとメルディウスはベータテスト版からの付き合いではないにしても、相当長い年月ゲームを共にしていた戦友の様なものだ。 「ジジイ……お前、まさか……」  盃をゆっくりと地面に置き、メルディウスは目を大きく見開く。  何も言わなくても、マスターの考えていることがメルディウスには手に取るように分かった。あの作戦会議の最初に口にした言葉――あれが指した本当の意味は……。
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