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意識すればするほど心拍数が上がり目の前のウサギ程度の大きさのラットでさえ、まるで凶暴な野獣のように星の目には映っていた。
完全に血の気が引いて顔面蒼白の星を気にかけるように、少女が話し掛ける。
「ねぇー。大丈夫? 顔色が悪いけど……」
「も、もし……攻撃されたら?」
星は不安そうにそう呟いて、少女を見上げた。
「大丈夫! 私があなたを殺させないわ。こう見えても私、結構強いのよ?」
少女は力強く告げると、怯えた様子の星に向かってにっこりと微笑んだ。その後、少女は思い出したように指でコマンドを操作する。
すると、星の目の前に――。
『エミル様より星様へのパーティー申し込みが行われました。了承しますか? 【YES】【NO】』
っというメッセージが表示された。
ゲーム自体これが始めてのプレイとなる星には、その内容がさっぱり読み取れずただただ首を傾げている。
「これは?」
「PTのコマンドよ? 今のままだとあなたのHPバーが私には見えないから、もしもの時にどうしようもないでしょ?」
「……そうなんですか?」
星はその言葉を聞いても、意味が分からないのかきょとんとしている。
それもそのはずだ。星は生まれて初めてゲームをプレイしている。それも最近やっと普及してきたばかりのVRMMOシリーズのゲームだ。
この【VR】とは、実際にゲーム内に入った感覚でプレイできるという画期的で最近流行り始めたゲームジャンルなのだが、ハードも頭に被るのではなく手首に巻くリング状という奇妙なもので、その理論も多くが謎に包まれていたことから、科学的に人体に影響がないのか?という大衆の不安の声もあり。日本ではそれほど大きく浸透していなかった。
だが、ある国際的な医療機関が人体への影響はないと表明してから、日本国内でも爆発的にヒットし始めたのはまだ記憶に新しい。
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