ダンジョン最深部へ

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 エリエと星が入ったテントの中から星の悲鳴が聞こえた。  それからしばらくして、エリエに背中を押されながら、星が恥ずかしそうにテントから出てくる。  背中に羽の模様が付いている白を基調したフリル付きのブラウスに、これまたフリル付き柔らかそうな黒のスカートという年頃の女の子と言った感じだ。着ている星も普段は選ばない服に顔を耳まで真っ赤に染め、膝上程のスカートの裾を両手で必死に抑えている。 「あの……スカートはやっぱり……」 「どうして? 凄く可愛いよ! ねっ、エミル姉!」 「そうね! 凄く似合ってるわよ星ちゃん!」  2人は目をキラキラさせながら星を見て、少し興奮気味に詰め寄ってくる。その勢いは今までにないくらい強く、星が少し引いてしまうほどだった。  これが現実世界なら、カメラで間違いなく写真を撮られる勢いだろう。 「――うぅ……そんな事ないです。私に似合うはずがないのに……」  2人に褒められた星は浮かない顔で、俯き加減に聞こえない様に小さく呟いた。  それもそのはずだ。星にとってスカートは、いじめられるきっかけにもなったもので、あまり良い印象がない。悪夢の様なあのノーパン事件以来。星がスカートを穿いたことなんてなかった……。  そのせいか、普段から長めのズボンと地味な服を好んで選んで身につけていた。  星は同じクラスの女の子が着ているようなフリルが着いている服を、まさか自分が着る時がくるなんて、今の今まで想像もしていなかったのだ。  普段しない格好をしているせいで、まるで自分が自分じゃないかのような違和感が星の心の中で渦巻いていた。
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