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「デーモンハンド? 悪魔の手とは大層な名前だな」
「まあ、そう言うな。この装備は闇属性のエネルギーを高密度収束して放つ事ができる。あの刹那に拳に集めたエネルギー放ち、自分の体を吹き飛ばしてダメージを和らげたただけのこと……」
その話を聞いて、メルディウスの表情は一変する。
彼からすると、先程の一撃は確実に撃破したという手応えがあったのだろう。基本的に高レベルプレイヤーを一撃で撃破できるだけのダメージは与えられない。
だが、攻撃のダメージと岩肌に激突させたダメージに崖が崩れた時の瓦礫によるダメージがあれば一撃で撃破できたはずだった……。
メルディウスは殺意を剥き出しにして、腕組しているマスターを見る彼の体から更に凄まじい殺気が滲み出ていた。
「そうか……お前はそんな隠し球を、ギルドの時から俺達に見せずに温存してたってか……いつもいつも俺達をバカにしやがって!!」
「――何を言っておる。これはお前達と別れた後に手に入れた武器だ、お前が知らぬのも無理はあるまい」
そのマスターの話に耳を傾けることもなく。メルディウスは再び大剣を構えると、マスターに剣先を向ける。
冷静さを完全に失った彼の様子を、対峙するマスターは静かに窺っている。
メルディウスはその冷静なマスターの様子がしゃくに障ったのか大声で叫んだ。
「そんな事はどうだっていいんだよ!」
持っていた大剣を肩に担ぐと、姿勢を低くして攻撃の体制に入る。
「……儂は強くなりすぎただ? このまま一緒に居ても、お前達に迷惑がかかるだ? ふざけんじゃねぇぞ!!」
メルディウスはぶつぶつと独り言のようにそう呟くと、突然咆哮を上げながらマスターに向かって斬り掛かってきた。
その攻撃を容易くかわしたマスターに、メルディウスは再び叫んだ。
「――そういって去ったお前が! 今更ギルドを作ろうだって? お前が俺達のギルドを去ってから俺と紅蓮はまたギルドを立ち上げた。だが、お前の名前のせいで何度もギルドを潰してきたんだよ! お前には分からないだろうがなッ!!」
メルディウスは大剣を構え直し、大きく振り上げるとすぐに打ち込んできた。
自分に向かって振り抜かれた刃を、マスターは両手の平で挟んで受け止める。
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