名御屋までの道中

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 パーティーに入ったことにより、名前とLvを彼等に知られてしまい。更にはマップに、彼女の位置情報がマーカーで表示されるようになってしまった。  ある程度のレベルの女性プレイヤーなら、不用意に男性だけのパーティーにはいかない。しかし、初心者の彼女がそんなことを知っているはずもなく。  フィールドの人気のない森に連れてこられ、急に乱暴しようとしてきた彼等から必死に逃げてきた結果。森の奥の、しかもこんな場所に彼女は追い込まれてしまったのだろう。   (こんな事ならお兄ちゃんの言う通り。低レベルのモンスターを狩って宿屋に閉じ籠もっている方が良かった……)  瞳から涙を流した少女が心の中で悔やんでも、過ぎた時間は取り戻せるはずもなく――。 「お前の装備なんていらねえからちゃっちゃと脱げよ!」  スキンヘッドの男が催促するように叫びながら壁をもう一度強く殴った。  少女は怯えた様子で、身体を小刻みに震わせた。    「そうカリカリするなって、この子は俺達に脱がせて欲しいんだよ――なっ!」  そう言うと耳にピアスを付けたチャラそうな男が、一歩前に出て彼女の革鎧に手を掛けた。  その瞬間「イヤッ!」とその手を振り払うと、少女はその場にうずくまった。  すると、その男の態度が急変する。 「なにすんだよ!」  声を荒げた男が少女の茶色く長い髪を鷲掴みにすると、強引に彼女を立たせた。 「いや! いたい、やめて!!」  そう叫んだ直後にパン!っと乾いた音が響き渡った。  男は自分の頬を押さえながら、驚きを隠せないという表情で少女の顔を見つめている。 「図に乗ってんじゃねえよ! お前立場分かってんのか!? この世界で殺されれば現実でも死ぬんだぞ! それとも、試しに死んでみるか?」 「……ひっ! い、いやぁ……」  少女は涙を流しながら首筋に突きつけられた剣を見つめ、恐怖で掠れた声を上げた。  そんな少女の反応を楽しむかのように、彼女の身体を好き勝手に弄っている。 「や、やめて……」 「ふはっはっ! やめてほしかったら強くなる事だな!!」  少女は涙混じりの声でそう呟くと、黒い鎧の男が狂った様な声を上げて少女の装備を剥ごうと手を掛けた。
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