名御屋へ・・・

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 当然だろう。マスターと久しぶりの対面の後。千代から数日でここまで来たのだ、狩りで資金を準備する時間も高価なアイテムを売却し、資金に変える時間もなかった。  仕方なく。メルディウスはただでさえ浪費癖の激しい自分の貯金から旅費を出しているのだ。戦いで減る武器の耐久度も、ここにくるまでの雑魚モンスターとの戦いで相当摩耗している。武器が消滅する前に、手入れにも金を使わないといけないのだ。  トレジャーアイテムとはその名の通り『財宝級のアイテム』ということで、その修理費も馬鹿にならない――。  脳裏に吹っ飛ぶ金の金額が鮮明に頭に過り、メルディウスの全身から冷や汗が吹き出す。  紅蓮は慌てふためいているメルディウスにそっと革の袋を渡す。彼が渡された革の袋を開くと、その中には大量の金貨が入っていた。 「お前これ――」 「――おそらくこれで足りると思うので、これを使って下さい」 「……本当にいいのか?」 「ええ、これもサブギルドマスターの務めですし。それに私も、今すごく楽しいですから」 「――そ、そうか……」  そう言ってぎこちなく微笑みかけた紅蓮を見て、メルディウスは少し複雑な気持ちになる。  それは、やはり紅蓮にとってマスターの存在が大きいと思い知らされたからに他ならない。  今まで紅蓮と2人で居る時に、彼女がこんなにも嬉しそうにしているのをメルディウスは見たことがなかった。  だが、マスターがともにいる今は、紅蓮はとても生き生きしている。 (紅蓮……やはりお前に必要なのは俺じゃないんだな……)  メルディウスはそう心の中で呟くと、横目で悲しそうにマスターの顔を見た。  素直にマスターより劣っている自分が悔しかったのもある。だが、自分の心のどこかに、昔ギルドを組んでいた頃に戻った様な、そんな感情もあるのも事実だ。  だがなにより。マスターが側にいることで、自分自身も何でもできそうな気持ちと安らぎを感じていたからだろう。  いや、悔しいという気持ちよりもそっちの方が強いかもしれない……。   「さて、それでは名御屋の街に入るぞ! ぐずぐずしておっては夜明けになってしまうのでな!」  マスターは馬から降りて、一番に街の中へと入っていった。
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