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雲の上に座りながら懐の短刀を見ながら、紅蓮は昔のことを思い出していた。
そう。それはまだ紅蓮とマスターが同じギルドにいた時の話だ――。
* * *
フリーダム内で実装された、強力なトレジャーアイテムを入手できるイベントが、一定期間だけ開催された。
そこで『冥府の神炎』というダンジョンで最深部のボス――神炎のミノタウロスブラザーズが落とす『鬼神の柄』と『鬼神の刃』が揃って始めて完成する『閻魔の脇差』というアイテムなのだ。
紅蓮、メルディウス、マスターは千代の付近の『地獄谷』と呼ばれている場所に訪れていた。
「よっしゃー! 燃えてきたぜ! トレジャーアイテムをゲットしたら俺が貰うからな!」
「もう、メルディウスはせっかちですね。そんなに焦らなくてもアイテムは逃げはしませんよ?」
まるで子供のようにはしゃいでいるメルディウスを見て、くすっと微笑みを浮かべながら楽しそうに紅蓮が言った。
今の紅蓮からは想像もできないとても楽しそうな彼女の様子は、まるで別人ではないのかと驚くほどだ――。
しばらく平原を徒歩で進んで行くと、目の前に大きな洞穴が見えてきた。その場所はすでに多くのプレイヤー達でごった返している。
それを見たメルディウスが興奮を抑えきれない様子で大声で叫ぶ。その声に周りのプレイヤー達が驚き、次の瞬間にはくすくすと笑う声が聞こえてきて、紅蓮が恥ずかしそうに頬を赤らめる。
「――楽しみなのは分かりますけど、もう少し声を抑えて……」
3人だけに聞こえる様な小さな声でメルディウスをたしなめると、続けてマスターも口を開く。
「うむ。紅蓮の言う通りだ。メルディウスよ。お前はもう少し落ち着きというものをだな」
「しかたねぇーだろ? 期間限定イベントは期間決まってるんだからよぉ……」
怒られ、ふてくされながら口を尖らせ、不機嫌そうに眉をひそめるメルディウス。
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