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一瞬ガーベラの全身の筋肉が盛り上がったと思った瞬間。勢い良く右腕を岩目掛けて突き出す。
「うおらあああああああああああああああッ!!」
ガーベラの雄叫びとともに岩が粉々に粉砕され、その破片が崖の下へと落ちていく。
あまりの光景に、デイビッドがぽかんとしながら呟く。
「……罠とか考えないのか?」
「罠? あなたは臆病だね。罠さえも粉砕すればいいだけじゃない」
ガーベラはトンファーを手にニヤリと得意げに笑みを浮かべて言った。
確かに、彼等に罠なんて陳腐なものは通用しないのかも知れない……。
デイビッドはガーベラの発言に呆れながら額に手を当て、大きくため息をつく。
前を歩いていたエリエが振り向いて、デイビッドに告げる。
「罠なんて気にしてられないよデイビッド。間に合わなかったら意味が無いんだから!」
「あ、ああ。そうだな……」
そのエリエの表情は相変わらず険しく、真剣そのものだった。
だが、これはおかしい。本来ならばデイビッドを前に、まともなことを口にするエリエなど見たことはない。
普段なら「全く。ビビりなんだから」などと言って、間違いなく彼を罵ってくるはずなのだ。
まあ、それだけ今回のことに責任を感じ。本気で取り組んでいるということなのだろうが……。
そんなエリエに、サラザが優しい口調で言う。
「エリー焦っても空回りするだけよ~」
「サラザ……でも……」
今にも泣き出しそうになるエリエを見て、サラザは表情を曇らせている。
サラザにも今のエリエの落ち着かないという心境は理解しているつもりだ。だが、ここで焦ったところで敵の術中にハマるだけなのは火を見るより明らかだった。
何の目的かは分からないにしろ、先程の道を塞いでいた岩も何らかの目的で置かれたもの。それがこちらを阻む為か、困惑させる為なのかは分からないものの、敵は確実にこちらに対してアクションを起こしてきている。
その時、カレンの肩に乗っていたレイニールが、イライラした様子でパタパタと翼をはためかせ、サラザ達の方へ飛んできた。
「我輩は飛ぶぞ! こんな面倒な場所で足止めされている暇はないのじゃ! 早く主を助けなければ!」
「いや、それは止めた方がいいと思うよ?」
憤るレイニールに向かってデイビッドが告げると「どうしてじゃ!」と声を荒げるレイニールにデイビッドが頭上を指差しながら答えた。
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