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男は笑みを浮かべると、右手でカレンの腕を抑えて、左手で頬をがっしりと掴んで口を強引に開かせる。
カレンは嫌な予感に、表情を引きつらせながら男を見た。するとその直後、男の顔がカレンの顔に迫ってくる。
男の突然の行動に、予期していなかったカレンは慌てふためく。
「なっ! 何をするつもりだ……や、やめろ……やめてぇ~!!」
カレンは迫り来る男に普段は出さないような悲鳴を上げると必死に抵抗する。だが、その抵抗虚しく出会って数分の男に、カレンの唇を奪われてしまった。
すると、男の口を通してカレンの口に先ほどのポーションの中身が流し込まれる。
カレンは男が顔から手を放したのを見計らって、慌てて首を左右に振って男から逃れた。
(なんで……こんな……こんな奴に……屈辱だ!)
瞳に涙を浮かべたカレンはそう心の中で呟くと、男を鋭く睨む。
男は満足そうな笑みを浮かべると体を起こす。
ほくそ笑みながら両手首を持っていた右手解いて、カレンの頬を掴んでいた左手も放しゆっくりと立ち上がる男に、カレンが瞳を潤ませながら叫ぶ。
「俺の……俺の初めてが、こんなかたちで……絶対に許さねぇー! 絶対殺してやるからなッ!!」
殺意を剥き出しにしているカレンに、男は少し呆れながら言い放つ。
「たかが仮想世界でその反応とは、情けない奴ぜよ。お前は小学生なのか?」
「くッ! この野郎! 言わせておけば――」
(――なっ、体の感覚が完全にない……)
憤っていたカレンは突然襲って来た体の明らかな異変に気付く。
その原因は、明らかにさっき口移しで無理矢理飲まされたポーションであることは間違いない。だが、何よりさっきまであったはずの全身の感覚が完全になくなっている。
しかし、全ての感覚がなくなったわけでもなく。手足を動かすという脳の信号だけをカットされ、地面に寝ていると肌から伝わる感覚――触覚は先程より鋭くなっている気がする。だが喋れているということは、動かす感覚がなくなっているわけではない。
簡単に言うと、首から下の体を動かすという感覚だけが完全になくなっているのである。
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