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あの時エリエと別れ、1人で囚われの身となった時に、一緒に全てを切り捨てたつもりだった。しかし、今自分の瞳に映るのは紛れもなくレイニールの姿だ――。
「ほう。侵入者が入ってきたようだ。まあ、私には関係ないがね……」
「――待ってください!」
星は大声で叫ぶ。
モニターを見ていた男が突然振り向くと、一瞬驚いた顔をしたが、すぐに不気味に笑いながら徐々に星の方へと向かってきた。
狼の覆面の男は低い声で星の耳元で呟く。
「……イヴ。あのドラゴンと他の者を助けたいかね?」
「――他の者……?」
その言葉に、星はもう一度モニターを確認すると、そこには人間状態のレイニールとオカマ達、エリエの姿に変わっていた。
(エリエさんにサラザさん達も……)
画面の向こうで戦っている仲間の姿を見て、星の頬を涙が伝う。
その瞬間、星の頭の中には現実世界に帰りたいという感情が一切なくなって、どうしたら皆を無事に逃がせるかに変わっていた。
「はい! 私はどうなってもいい。だからあの人達は助けて下さい!!」
星は涙ながらに男に訴えた。
その星の潤んだ瞳を見て、狼の覆面の男は深く頷くと優しい声で言った。
「そんなに大事なのかい?」
「はい! だから、あの人達には危害を加えないで下さい!」
「そうか、そんなに大事なんだね?」
星は上から見下ろしている狼の覆面の男に何度も頷いて見せた。
すると、男は星の涙を拭うと徐に告げる。
「――イヴ。泣くのは止しなさい……この私が君の悩みを取り除いで上げますよ」
「本当ですか!?」
星は希望に満ちた眼差しで、彼を見つめる。その直後、覆面の隙間から男の微笑む口元が見えた。
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