再会

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 長い沈黙の後、エミルが神妙な面持ちで話し始めた。 「おそらく、あの男の話は本当だと私は思う。考えてみて、これだけの事件を起こす人間よ? わざわざ嘘をつく理由が見つからない」 「だが、逆にそういう人間だからこそ、平気で嘘をつくとも考えられないか……?」 「確かに……出る方法があるなら、私達をここに閉じ込めておく理由もないものね……」 「うーん。とりあえず、情報が不足し過ぎている今の現状では、奴の目論見を推測のしようにも……」  エミルと意見をぶつけた後、デイビッドが苦虫を噛み締めた様な顔で眉をひそめた。  確かに今の現状でいくら推測しようが、実行犯である。あの狼の覆面の思惑を把握することなどできない。人の考えていることなど、当の本人以外は知り得ない。ということだろう……。 「……おそらく。出口は存在しているはず、運営側がこういう事態を想定していないはずがないもの……そしてもう一つ。シルバーウルフというグループは間違いなく運営内にスパイの様な人間がいるということ。そして、それもまた運営側は想定しているはずよ」 「なら、犯人グループにも分からないような場所に出口があるということか?」 「ええ、おそらく。ダンジョンのどこかに……」  2人はお互い顔を見合って頷いた。  エミルの言った通り、運営する会社がゲームをハッキングされることを想定していないはずがない。  世界的に人気の【FREEDOM】というゲームが、これほど爆発的にヒットできた要因として、このゲームが近代化に伴う新たなゲームジャンルの研究発展を目的として派生したプロジェクト『VRGP(Virtual Reality Game Project)』を開始した。  このプロジェクトは『国際連合機関 企業外貨獲得促進計画』の手厚いサポートを受けていたからだ。  長期的な産業の中でもゲームは、一般人の娯楽として世界に大きく浸透している。これに目を付けた国連が、世界規模の外貨獲得競争に乗り出した――各国が技術協力して、一般企業に負けないほどの自国の文化を題材としたゲームを開発していた。  長く続いた経済戦争に終止符を打つ為の国家間の協力策で、各国の技術の粋を結集して作り上げたのが、この【FREEDAM】なのだ――。
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