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「華さん?」
きつく握りしめたこぶしにそっと触れると、華さんは深々と頭を下げた。
「乙羽ちゃん、本当にごめんなさい。謝っても許されることじゃないってわかってる。だから、どんなになじられても殴られてもかまわない。でも……私……乙羽ちゃんのことが大好きなの。嫌われたくない……わがままよね」
あまりにもストレートな言葉に、私はどう返していいかわからなかった。
いったん言葉を切ると、華さんは意を決したように口を開く。
「乙羽ちゃんを巻き込んだのは私。倭斗からイベントの話を聞いて、川上華子の名をかたってイベントをでっち上げたヤツを、この手で捕まえようと思ったの。実はね……私が川上華子なの」
突然のカミングアウト。
これはデジャヴ?
そんなやりとりを根本と倭斗くんが繰り広げていたばかりだ。
「へ? え? なんで? 川上華子さんは倭斗くんじゃないんですか?」
こんがらがる私に、倭斗くんが驚いた顔をした。
「お前、俺の話信じたの? あれは、あの場を切り抜けるためのウソだよ。まさかホントに信じるとは思わなかったけど、お前まで信じたとは思わなかった」
しれっと言い切る倭斗くん。
「全部ウソ?」
尋ねる私に、倭斗くんはコクンと頷いた。
「え? でもあの時、さも自分が見てきたって感じで話してたけど……」
「ああ、あれ? あれは全部、華が言っていた事をそのまま話しただけ」
「なになに? どういう事?」
その場にいなかった華さんだけが話についていけない。
倭斗くんが事の次第をひと通り説明すると、華さんは声を立てて笑った。
「ペンネームって言うのは間違っていないけど、川上は母親の旧姓なの。職業は歴史研究家。正体を明かさないのは、色々面倒が多くてさ。テレビに出てくれとか、取材とかうるさくて研究どころじゃなくなっちゃうの」
確かに、有能かつ、容姿端麗ならば周りが放っておかないだろう。
「だから、素性を隠してたんだけど、こんなことになるなら、乙羽ちゃんにはちゃんと言っておけばよかった。ホント……嫌われても仕方ないわよね」
今にも泣き出してしまいそうな華さんの表情に、私もどうしていいかわからなかった。
でも一つだけはっきりしていることがある。それだけは華さんにちゃんと伝えなきゃいけないって思った
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