17人が本棚に入れています
本棚に追加
第五章
目が覚めた時、軽い頭痛を覚えた。
とてもイヤな夢を見ていた。
この頭痛は夢見の悪さからくるものなのか……、そう思ったけど、すぐに違うと気付く。
天井は真っ白で殺風景な部屋。
どうやら病院らしい。
病室は暗く、枕元にある照明が淡く光っている。窓はカーテンが閉まっていて外は見えなかったけど、外はすでに暗くなっているのが分かった。
鈍い頭痛に顔を歪める。
頭が痛いのは、根本に薬をうたれたからだと思い出す。
すると、堰を切ったようにこれまでの出来事が頭の中を駆け巡った。
自分のせいで傷だらけになってしまった倭斗くんの姿を思い出し、胸がズキンと痛んだ。
その時、白衣を着た女性が入ってきて点滴を見ながら、何やらメモをとっている。
「あの……」
声をかけると、看護師さんが少し驚いたように、私を見下ろした。
「あら、起こしちゃった?」
「いいえ、あの、一緒に男の子が運ばれてきませんでしたか?」
すぐさま質問した私に、一瞬驚いたけど、看護師さんはがすぐに答えを返してくれた。
「桐谷さんのこと? とってもイケメンの男の子でしょ?」
「あ、はい。彼は無事ですか?」
せっつくように聞く私に、看護師さんは笑みを浮かべた。
「大丈夫よ。手の傷は縫合したけど、他の傷はたいしたことなかったみたいよ」
看護師さんの『大丈夫』という言葉を聞いて安心する私の顔を、看護師さんが覗き込んできた。
「気分はどう? 吐き気やめまいはある?」
「特に……少し頭痛がします。でも大丈夫です」
「一応、熱を測っておきましょうか。後で先生からお話があると思うけど、睡眠導入剤を注射されたけど量は多くなかったみたいだから、心配ないそうよ。念のため今日は入院してもらって、問題なければ明日には帰れるわよ。ご両親も先ほどまでいたけど、今日は目覚めそうもなかったし、帰ってもらったの。明日の朝一には来るっておっしゃっていたけど、連絡出来そうならしてあげて、安心すると思うわ」
そう言うと、看護師さんが体温計を手渡してくれた。
その体温計を受け取ると、起き上がって脇に挟む。
最初のコメントを投稿しよう!