第五章

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第五章

 目が覚めた時、軽い頭痛を覚えた。  とてもイヤな夢を見ていた。  この頭痛は夢見の悪さからくるものなのか……、そう思ったけど、すぐに違うと気付く。  天井は真っ白で殺風景な部屋。  どうやら病院らしい。  病室は暗く、枕元にある照明が淡く光っている。窓はカーテンが閉まっていて外は見えなかったけど、外はすでに暗くなっているのが分かった。  鈍い頭痛に顔を歪める。  頭が痛いのは、根本に薬をうたれたからだと思い出す。  すると、堰を切ったようにこれまでの出来事が頭の中を駆け巡った。  自分のせいで傷だらけになってしまった倭斗くんの姿を思い出し、胸がズキンと痛んだ。  その時、白衣を着た女性が入ってきて点滴を見ながら、何やらメモをとっている。 「あの……」  声をかけると、看護師さんが少し驚いたように、私を見下ろした。 「あら、起こしちゃった?」 「いいえ、あの、一緒に男の子が運ばれてきませんでしたか?」  すぐさま質問した私に、一瞬驚いたけど、看護師さんはがすぐに答えを返してくれた。 「桐谷さんのこと? とってもイケメンの男の子でしょ?」 「あ、はい。彼は無事ですか?」  せっつくように聞く私に、看護師さんは笑みを浮かべた。 「大丈夫よ。手の傷は縫合したけど、他の傷はたいしたことなかったみたいよ」  看護師さんの『大丈夫』という言葉を聞いて安心する私の顔を、看護師さんが覗き込んできた。 「気分はどう? 吐き気やめまいはある?」 「特に……少し頭痛がします。でも大丈夫です」 「一応、熱を測っておきましょうか。後で先生からお話があると思うけど、睡眠導入剤を注射されたけど量は多くなかったみたいだから、心配ないそうよ。念のため今日は入院してもらって、問題なければ明日には帰れるわよ。ご両親も先ほどまでいたけど、今日は目覚めそうもなかったし、帰ってもらったの。明日の朝一には来るっておっしゃっていたけど、連絡出来そうならしてあげて、安心すると思うわ」  そう言うと、看護師さんが体温計を手渡してくれた。  その体温計を受け取ると、起き上がって脇に挟む。
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