第五章

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 ぐだぐだと考えている私に、看護師さんが少しいたずらっぽく笑った。 「あなたが目覚めたら教えてあげるって言っっちゃんだけど……」 「え? えっと……あの、今何時ですか?」  少し聞くのが怖かったけど、聞かずにはいられない。  看護師さんは腕時計を見た。 「八時二十三分――」 「は、八時二十三分? ちなみにここに運ばれてきたのって何時かわかりますか?」 「え~と、二時頃だったかしら」  ということは、六時間以上も倭斗くんは待ってくれてるの?  その時間にも驚いたけど、看護師さんの話をすぐに信じることができなかった。  だって、あの倭斗くんがずっと私の手を?  うそでしょ……。  しかもずっと私が起きるのを待ってるなんて……。  なんで?  浮かんでくるのは疑問ばかり。   看護師さんが私にウソをつく必要性は全くないし、ウソをついたところで看護師さんにはなんのメリットもない。  看護師さんが私をからかってるだけかとも思ったけど、それこそあり得ない。  と、ここで、ピピピピピ……という電子音が聞こえた。  いったん思考を止めて、体温計を看護師さんへ渡す。 「熱はないわね」 そう言うと、看護師さんはサッとメモをすると視線だけを私に向けた。 「彼、そこで待っているけど、どうする?」 「え? ずっとそこに居るんですか? 面会時間過ぎてるんじゃ……」 「彼、体中傷だらけだったから、一応検査する必要があってね、彼も今日ここに入院するの」  いったん言葉を切ると、看護師さんは私に顔を近づけると小声で続けた。 「どうしてもあなたのことが気になるのね。寝てなきゃダメって注意したんだけどね、まったく聞く気がないみたい。ガードマンみたいに怖い顔して立っているわよ」 「え?」  驚く私に、看護師さんはニタっと笑った。
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