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ぐだぐだと考えている私に、看護師さんが少しいたずらっぽく笑った。
「あなたが目覚めたら教えてあげるって言っっちゃんだけど……」
「え? えっと……あの、今何時ですか?」
少し聞くのが怖かったけど、聞かずにはいられない。
看護師さんは腕時計を見た。
「八時二十三分――」
「は、八時二十三分? ちなみにここに運ばれてきたのって何時かわかりますか?」
「え~と、二時頃だったかしら」
ということは、六時間以上も倭斗くんは待ってくれてるの?
その時間にも驚いたけど、看護師さんの話をすぐに信じることができなかった。
だって、あの倭斗くんがずっと私の手を?
うそでしょ……。
しかもずっと私が起きるのを待ってるなんて……。
なんで?
浮かんでくるのは疑問ばかり。
看護師さんが私にウソをつく必要性は全くないし、ウソをついたところで看護師さんにはなんのメリットもない。
看護師さんが私をからかってるだけかとも思ったけど、それこそあり得ない。
と、ここで、ピピピピピ……という電子音が聞こえた。
いったん思考を止めて、体温計を看護師さんへ渡す。
「熱はないわね」
そう言うと、看護師さんはサッとメモをすると視線だけを私に向けた。
「彼、そこで待っているけど、どうする?」
「え? ずっとそこに居るんですか? 面会時間過ぎてるんじゃ……」
「彼、体中傷だらけだったから、一応検査する必要があってね、彼も今日ここに入院するの」
いったん言葉を切ると、看護師さんは私に顔を近づけると小声で続けた。
「どうしてもあなたのことが気になるのね。寝てなきゃダメって注意したんだけどね、まったく聞く気がないみたい。ガードマンみたいに怖い顔して立っているわよ」
「え?」
驚く私に、看護師さんはニタっと笑った。
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