第五章

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「顔、見せてあげれば? そうすれば彼も少しは安心できるんじゃない? あなたが嫌じゃなければだけどね」  そう言いながらも、看護師さんは私が拒否しないと思っているのか、乱れた髪や衣服を整えてくれる。    私も倭斗くんの様子が気になっていたから、直接話ができるのであればその方がいいと思うけど、何故か看護師さんの方が落ち着きなくソワソワしだすので、こちらもそれにつられてドキドキと胸が高鳴る。 「よし、じゃあ呼ぶわよ」  そう言うと、看護師さんは私の返事も待たずに行ってしまう。  看護師さんが行ってしまうと、急に部屋が静かになり、さらに緊張してしまう。  でも、すぐに倭斗くんが入ってくると思っていたのに、倭斗くんはなかなか病室に入ってこない。  落ち着きなくひとりソワソワしていると、コンコンと遠慮がちにノックする音が聞こえた。  その音に心臓のドキドキも加速する。 「は、はい」  思わず声が上ずる。  返事をすると、ゆっくりとドアが開いた。  現れたのは、顔や腕にガーゼを貼り、手には白い包帯を巻いた倭斗くんの姿。  その姿にズキンと胸が痛む。  倭斗くんはいつになく緊張した面持ちをしていたけど、私の顔を見ると、少しホッとしたように表情を緩めた。 私が寝ているベッドの横にくると、倭斗くんは深々と頭を下げた。 「ごめん」  開口一番、倭斗くんが謝ってきた。  謝る必要がどこにあるのだろう。根本のナイフから身を挺して守ってくれたのは倭斗くんなのに。 そのせいで倭斗くんは手に傷を負った。謝らなければならないのは自分の方だ。 私が口を開きかけた時、勢いよく病室のドアが開いた。 「乙羽ちゃん!」  勢いよく部屋に入ってきたのは華さんだった。  華さんは私の顔を見ると、辛そうに顔を歪ませた。 「ごめんね。乙羽ちゃんに怖い思いをさせちゃったわね」  首を横に振った。 「私なんか……」  倭斗くんに比べればたいしたことない、そう言いかけた私をよそに、突然華さんは倭斗くんの胸ぐらをつかむと勢いよく頬を叩いた。
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