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「顔、見せてあげれば? そうすれば彼も少しは安心できるんじゃない? あなたが嫌じゃなければだけどね」
そう言いながらも、看護師さんは私が拒否しないと思っているのか、乱れた髪や衣服を整えてくれる。
私も倭斗くんの様子が気になっていたから、直接話ができるのであればその方がいいと思うけど、何故か看護師さんの方が落ち着きなくソワソワしだすので、こちらもそれにつられてドキドキと胸が高鳴る。
「よし、じゃあ呼ぶわよ」
そう言うと、看護師さんは私の返事も待たずに行ってしまう。
看護師さんが行ってしまうと、急に部屋が静かになり、さらに緊張してしまう。
でも、すぐに倭斗くんが入ってくると思っていたのに、倭斗くんはなかなか病室に入ってこない。
落ち着きなくひとりソワソワしていると、コンコンと遠慮がちにノックする音が聞こえた。
その音に心臓のドキドキも加速する。
「は、はい」
思わず声が上ずる。
返事をすると、ゆっくりとドアが開いた。
現れたのは、顔や腕にガーゼを貼り、手には白い包帯を巻いた倭斗くんの姿。
その姿にズキンと胸が痛む。
倭斗くんはいつになく緊張した面持ちをしていたけど、私の顔を見ると、少しホッとしたように表情を緩めた。
私が寝ているベッドの横にくると、倭斗くんは深々と頭を下げた。
「ごめん」
開口一番、倭斗くんが謝ってきた。
謝る必要がどこにあるのだろう。根本のナイフから身を挺して守ってくれたのは倭斗くんなのに。
そのせいで倭斗くんは手に傷を負った。謝らなければならないのは自分の方だ。
私が口を開きかけた時、勢いよく病室のドアが開いた。
「乙羽ちゃん!」
勢いよく部屋に入ってきたのは華さんだった。
華さんは私の顔を見ると、辛そうに顔を歪ませた。
「ごめんね。乙羽ちゃんに怖い思いをさせちゃったわね」
首を横に振った。
「私なんか……」
倭斗くんに比べればたいしたことない、そう言いかけた私をよそに、突然華さんは倭斗くんの胸ぐらをつかむと勢いよく頬を叩いた。
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