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「ああ、そうか。倭斗くんは笑い上戸だったか」
『鉄仮面の貴公子』が笑い上戸とは思いもよらなかった。無表情の倭斗くんの事しか知らない者にすれば信じられないことだろう。
涙を流しながら笑っている倭斗くんは華さんにしてみれば見慣れた光景なのか、そもそも興味がないのか、華さんは平然と旦那様を私に紹介してくれる。
「紹介するわね。こちら、私の旦那様の『もりのようせい』さん」
聞き間違いだろうか、今、華さんが旦那さんを紹介してくれたと思ったのだけど、その名前が見た目を裏切っている。
「森の妖精さん?」
聞き返すと、ブハッと倭斗くんが盛大に吹き出した。
「そう、森野洋平≪もりのようへい≫さんよ。警察官なの」
幸いにも華さんには、私が旦那さんの名前を聞き間違えたことに気づかなかったみたい。
でも、あいにく倭斗くんにはしっかり聞こえてしまったようだ。
さすがの華さんも大笑いする倭斗くんのことを訝しむ。
「ちょっと、倭斗何笑ってるのよ。あんたよ~く診てもらった方がいいわよ」
「いや……フフ、大丈夫……フフ、ク……ククククク」
必死に笑いを抑える倭斗くん。でも、笑いが収まることはなかった。
笑い上戸である倭斗くんの姿を見慣れているのか、私以外の二人は気にする様子もなく話を進める。
「洋平さん、こちらが奥村乙羽ちゃん。乙羽ちゃんをこんな目に合わせるなんて許せない! やっぱり一発殴っておけばよかった」
いきり立つ華さんを洋平さんが優しくなだめる。
「それはダメだよ。君の場合、一発でも正当防衛じゃなくて過剰防衛になりかねないからね」
やんわりとだけど、何気にすごいことを言っていると思うのは私だけだろうか。
警察官らしい説得? に、華さんは不満たらたらで抗議する。
「え~、なんでよ。私のお弁当の先生よ。それに歴史好きの大切なお友だちなのよ」
その言葉を聞いた途端、洋平さんは大きく目を見開いた。
「なんだって!」
そう叫ぶなり、洋平さんが私の手をガシッとつかんだ。
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