エピローグ

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 それに対して、倭斗くんも突き放したような言い方をする。 「お前がフルネームで呼ぶからだろ」  確かに。  でも素直に謝るのも癪に障る。  気まずくなって下を向いた。 すると、倭斗くんの制服のボタンが一つだけ違う事に気付いた。 あれ? ボタンが……。 「もしかして、入学式の時助けてくれたのって……」 「やっと気づいたか」 その言葉でハタと気付く。 「え? もしかして気付いていなかったのって、私だけ?」 何を今さら、とでも言いたげな表情の倭斗くん。 「お前以上にどんくさいやつは他にはいないだろ。電車からは追い出されるし、弁当だけ電車に取られるわ、せっかく集めたチラシを巻き散らすわ、挙句に根本に華と間違われるってどんだけどんくさいんだよ」  自分のドジっぷりを列挙され、恥ずかしさのあまり言い返す言葉もない。  いたたまれず下を向くと、自分の制服のボタンが取れかかっているのに気が付いた。  手に触れるとボタンがポロンと取れてしまった。  すると、倭斗くんは何を思ったのか、私のボタンを手に取った。 「あなたのはこっちだけど……」  慌ててポケットに入れっぱなしだったボタンを取り出して、倭斗くんに差し出した。  けれど、戸惑う私をよそに、倭斗くんはいたずらっ子のような笑みを浮かべた。 「そのボタンと交換」  意味が分からず聞き返した。 「はぁ? なんで?」 「虫よけ」 「え? ボタンに防虫効果があるなんて聞いたことないよ。しかもウチの制服って、男女でボタン違うし」 さらに言い募ろうとする私の頬を倭斗くんが引っ張った。 「はひふるにょひょ~」 何するのよ、と言ったつもりだったけど、頬を引っ張られたせいで言葉にならなかった。
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