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車のドアが開いた。
運転席側のドアから出てきたのは、ファッション誌から抜け出てきたかのような、スラリとした女性。周囲にどよめきが起こる。
ひと言でいうなら、キレイなお姉さん。
けれど、その女性の美しさは、そんな陳腐な言葉では到底言い現わせられない。
洗練された美しさを醸し出すその女性の姿に、性別問わずに見とれてしまうほどである。
見とれる自分の視線と、その女性の視線が重なった。すると、女性はニッコリと頬笑んだ。
クラッとするほど妖艶な微笑み。
次第に近づいてくる女性。遠目から見てもその美しさに目を奪われるのだから、間近であればなおのこと。ただただ、見とれるばかりだった。
「……あの」
容姿に違わぬ美しい声。鈴を転がしたような声とはよく言うけど、この時にしてようやくその形容が理解できた。
「あの、ちょっと、聞いています?」
女性はいつの間にか目の前にいて、私に話しかけていた。
「へ?」
自分でも間抜けなその返答の仕方に、ドギマギしてしまう。
「えっと……私ですか?」
女性はしっかりと私のことを見つめているのだから、私に声をかけているに違いない。周りを見ても自分以外に人はいない。
先ほどまでいた野次馬は、なぜかきれいに居なくなっていた。戸惑う私のことなんて構いなしに、女性はにっこり微笑んだ。
「あの……、一年二組の桐谷倭斗ってご存知?」
桐谷倭斗。知っているもなにも学年一、いや学校一といってもいいだろう。
この学校に通っている人なら知らない人はいないって断言できるほど、桐谷倭斗は有名だ。なにしろ、単なる学生であるにもかかわらず彼には熱烈なファンがいて、ファンクラブなるものが存在するほどだから、全校生徒が知っているといっても過言ではない。
容姿端麗、成績は常にトップ、加えてスポーツ万能。
『天は二物を与えない』とはよく言うけど、彼は神からいくつも与えられている。
世の中、なんと不公平なことか。
私なんて……。
思考があらぬ方向へとむかおうとした時、女性がそれを遮った。
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