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「いらない」
瞬殺で拒絶されたせいで、すぐには理解できずに思わず聞き返した。
「え?」
「いらないって言ったんだけど」
桐谷倭斗が不機嫌そうに言うと、何を勘違いしたのか霧谷くんがピューと口笛を吹いた。
「朝からプレゼント攻撃とは、ずいぶん積極的だねぇ~」
冷やかすようなその言葉を放った霧谷君をギロッと睨みつけると、彼は桐谷倭斗の後ろに隠れた。
慌てて訂正する。
「違うから! すっごい美人のお姉さんに、お弁当を『届けてほしい』って頼まれたの!」
はいこれ、と桐谷倭斗に渡そうとした私の手から、スッと霧谷くんが紙袋を奪った。
「うわぁ! 華さんの弁当だ。今日は食べられないと思っていたけど、わざわざ届けてくれるなんて、華さん優しいなぁ~」
「君じゃないから」
慌てて、霧谷くんの手から紙袋を取り返した。
「一生懸命心をこめて作ってくれている人に失礼でしょ! ちゃんと食べて感謝を述べるのが礼儀ってもんでしょ!」
先ほどまでの緊張が嘘のように、桐谷倭斗に言い返していた。
「作ってくれ、なんてひと言もいってねえし、無理やり押し付けられて感謝もクソもねえだろ」
むっかぁ~。
なんなのこいつ!
容姿・頭脳・運動神経と全てにおいて恵まれている桐谷倭斗は、神の最高傑作かと思いきや、性格最悪の失敗作だ。
『住む世界が違う人種』と初めて話をした感想は……。
最低最悪、チョーむかつく男!
緊張して損した。
お弁当は普通の料理とは違って、ものすごく手間がかかる。
栄養、彩り、冷めてもおいしいもの、傷まないもの、あらゆることを考えて、箱に詰めなければならい。
今はレンジでチンとすれば、見た目も味も申し分ないものがすぐにできる。おかげでずいぶん楽にはなった。
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