ある日、雨の降る夕方……

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妻(1)  夫から、呑んで帰るというメッセージ。もちろん嘘にきまってる。 「取引先の部長さんが相手じゃ疲れるでしょ」  私は良妻らしい気づかいをみせながら、どうせ終電を逃したなんて言って今夜も帰ってこないのだろうと考えていた。私にとっては好都合。夫が浮気を始めたおかげで、私もあの人と会いやすくなった。問題は娘だった。  そのとき、見計らったような連絡。 「ママ。今日、友達の家に泊まってもいい?」 「友達って? 誰の家?」 「ハルカだよ。いつも泊まってるでしょ。バスケ部のみんなで女子会しようってなって。ダメかな?」 「その子の家に着いたら連絡して。それから帰るときも」 「ありがとう、ママ」 「お酒はダメだからね?」 「そんなの飲まないってば」  ほどほどに心配する母親を装いながら、私のこころは女になっていた。シャワーに濡れながら肩を抱きしめる。一ヶ月前に抱かれたのがずいぶん前に感じられる。  これまで出会い系サイトで三人と会ったが、あの人とがいちばんいいのだ。夫なんか比べる気もならないほどに……。  あの人からの返信が届いた。 「今夜は泊まれるってほんと? めっちゃうれしい」
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