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「合格おめでとう、妹ちゃん」 「ありがとうございます」  高校の合格発表の日、家に帰るとお兄ちゃんとお兄ちゃんの友達の桃李(とうり)君が家にいた。 「これで春から同じ学校に通えるね」 「はい!」 「よろしく、妹ちゃん」  “妹ちゃん”それが彼が私を呼ぶときの名前だった。  初めて出会ったあの日からもう二年が経とうとしているのに、未だに彼の中では私はお兄ちゃんの“妹”でしかないことは、そう呼ばれるたびに思い知らされていた。 「あ、合格祝い買ってあるよー」 「受かるか分かんないのに買ってくれてたんですか?」 「落ちたら手土産って言おうと思って」  酷いことをサラッというと、はいどーぞと桃李君はビニル袋を手渡した。  中身は見なくても分かる。きっと…… 「「プリン」」  声を合わせた私に、桃李君は正解と笑った。 「妹ちゃんといえばプリンだからねー」 「もういい加減忘れてくださいって」 「いやいや、あれは忘れられないでしょー。強烈な第一印象だったからね」  二年も前のことを未だに言われると恥ずかしい。でも、あの日は――桃李君とは違う意味で私にとっても忘れられない日だった。     
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