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そんなに私から先輩と呼ばれるのが嫌なのだろうか……。私自身が先輩と呼びたくないことは棚上げして、そんな桃李君の態度に傷ついてしまう。
「はぁ……」
体育館へ向かう足取りが重い。今日もまたあんなふうに不機嫌な表情を向けられるんだろうか……。
「嫌だなぁ……」
「どうしたの?」
「え……?」
立ち止まった私に、後ろから誰かが声をかけた。振り返るとそこには――クラスメイトの三嶋君がいた。
「部活行かないの? 今日バスケ部ある日だよね」
「あ……うん。三嶋君はバレー部だったっけ?」
「そうだよ、知ってくれてたんだ」
ニッコリと笑うと、三嶋君は私の隣に並んだ。
「いつもさ、体育館で土屋さんのこと見てたんだよね」
「え?」
一瞬、ドキッとした。
けれど――。
「マネージャーがいるのいいなーって」
「あ……」
勘違いしそうになった自分が恥ずかしくて曖昧に笑うと、そんな私に三嶋君は内緒話をするように耳元に顔を寄せた。
「あんなふうに土屋さんに応援してもらえたら、部活頑張れるのになって思ったよ」
「え……それって、どういう……」
「ん? 内緒」
「三嶋君……?」
「ごめん、先行くね!」
そう言って笑う三嶋君の耳が赤くなっているのに気付いてしまって……私はどうしていいのか分からないまま、その場に立ち尽くしていた。
「――妹ちゃん」
「っ……!! あ……」
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