Please call name

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 私を呼ぶ声に振り返ると、そこには――桃李君の姿があった。 「と……先輩……」 「先輩、ねぇ」 「え……?」 「ううん、なんでも。体育館行かないの?」 「あ、行きます……」  なんとなく黙ったまま歩く私に、ねえと桃李君が言った。。 「さっきのやつ、誰?」 「え……?」 「妹ちゃんと仲良さそうに話してたやつ」 「あ……クラスの子です」 「ふーん?」  それっきり桃李君は何も言わなかった。  ただ、気まずい空気が私たちの間に流れていた。 「ただいまー」  久しぶりの部活休みの日、家のドアを開けると、見慣れた靴がそこにはあった。 「おかえり」 「ただいまです……。あの、お兄ちゃんは?」 「あー今コンビニ行ってる」 「そうですか……」  あの日から、なんとなく気まずくて桃李君とは最低限のこと以外話せずにいた。  だから、思いがけず二人きりになると――何を話していいのか困る。 「あ、先輩。ジュースでも飲みます?」  この空気を何とかしようと必死に話しかけた私に――桃李君は何故か冷たい視線を向けた。 「先輩?」 「……先輩、ねぇ」  そう言ったかと思うと、桃李君は私のそばに来て――手を掴んだ。 「っ……な……」 「ねえ、妹ちゃん。どうして先輩って呼ぶの?」 「え……」 「どうして?」 「それ、は……」     
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