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あの時私にいろいろ言ってきた先輩たちは桃李君のクラスメイトだとあとで分かった。その先輩たちを悪く言ってしまってもいいのだろうか――。
桃李君の友達かもしれないのに……。
「なんとなく、です……」
「ふーん?」
「先輩……?」
「……俺もう、先輩って言ったら返事しないから」
桃李君は握りしめた手に力をこめると、そう言った。
「え……?」
「わかった?」
「冗談、ですよね……?」
「冗談だと思う?」
「どうして――」
「ただいま。……何かあったのか?」
「べっつにー」
訳が分からず、理由を尋ねようとしたけれど、帰ってきたお兄ちゃんに遮られてしまった。
そのあと、いつも通り夕方まで過ごすと桃李君は帰って行った。
ただ、桃李君が私を見ることは一度もなかった。
宣言通り、あの日から何度呼びかけても桃李君が返事をしてくれることはなかった。
それどころかここ数日はテスト前の部活休みが重なったせいで、桃李君の姿を見ることすらなかった。
「なんで……」
「大丈夫?」
「うん……」
理由が分からなかった。他の子が先輩と呼んでも返事をするのに、どうして私だけ……。
「理由聞いてみたら?」
「聞いてみた」
「そしたらなんて?」
「自分で考えろって言われた」
私の答えに、知佳ちゃんはため息をついた。
「分からないから聞いてるのにね」
「ホントだよ……」
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