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次から次へと涙が零れ落ちる。
もう限界だった。
「助けて……桃李君……」
「はーい」
「え……?」
聞こえた声に顔を上げると……そこには会いたくて会いたくて仕方がなかった、大好きな人の姿があった。
「どうして……」
「妹ちゃんが、呼んだから」
「え……?」
「っていうのは、嘘で。……妹ちゃんの友達が俺のこと呼びに来てくれたんだ。愛梨が泣いてるって」
「知佳ちゃん……」
どこに行ってしまったのかと思っていたけれど……桃李君を呼びに行ってくれていただなんて……。
「どうしようか悩んだんだけど……でも、来て正解だったよ」
桃李君は先輩たちの方を見ると、ニッコリと笑った。
「ねえ」
「っ……」
「この子泣かせたの、誰?」
「あ……」
「俺の大事な子、泣かさないでくれるかな」
桃李君、と呼びかけようとした先輩たちの声を遮ると桃李君は冷たい視線を向けた。
そして――。
「俺のこと、名前で呼んでいいのはこの子だけだから。ただのクラスメイトが馴れ馴れしく呼ばないでくれる? 迷惑なのわかんない?」
桃李君が冷たく言い放つと……先輩たちは泣きそうな顔で走って行った。
残されたのは、私と桃李君の二人だけ――。
「大丈夫?」
「……桃李君……?」
「うん?」
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