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私の反応を楽しむように、桃李君は再び笑った。だから私は……。
「冗談はやめてくださいよ」
「えー、冗談なんかじゃないのに」
「はいはい、わかりました」
桃李君の言葉を受け流すと、不服そうな桃李君を放って二階の自室へと向かった。
制服のままベッドに寝転がると……真っ赤になった顔を枕に埋めた。
「っ……心臓に悪いよ……」
あんなの桃李君にとっては冗談かもしれない、でも……。
「桃李君のバカ……」
動悸は収まるどころか、思い出すたびに激しさを増して行った。
高校に入学して数日後、私は部活見学に訪れた体育館で、バスケをしているお兄ちゃんと桃李君の姿を見つけた。
「バスケかー」
「あれ? 愛梨バスケ部入るの?」
「ううん、私運動全然できないんだー」
「あはは、そんな感じする!」
一緒に回っていたクラスメイトの知佳ちゃんはそう言って笑うけれど、私の視線は桃李君にくぎ付けになったまま動けずにいた。
普段飄々としている桃李君が真剣な顔をしてバスケをしている姿は、好きな人だからとか関係なくカッコいい。……それが好きな人なら、なおさらかっこよく見えてしまう。
「桃李君、カッコいい……」
「桃李君……? あ、田神先輩のこと?」
「っ……! 私今口に出してた!?」
「出してた、出してた」
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