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「仲良しっていうか……お兄ちゃんの妹だから……」
「そんなことないって! あれは脈ありなんじゃないかな?」
「え……?」
「田神先輩も、愛梨のこと好きなんじゃない?」
「桃李君が……?」
そんなこと、あるんだろうか。ずっと片思いしてきた桃李君が私のことを――。
「なにあれー?」
「一年じゃないの? ちょっと優しくされて調子にのってるんだよ」
「……え?」
突然聞こえてきた声は、どう考えても私に向けられていた。
振り返った先にいたのは、お兄ちゃんや桃李君と同じ色のジャージを着た三年生の先輩たちだった。
「桃李君、だって。なにさまー?」
「ちょっと痛いよねー。勘違いしちゃいましたーって?」
「きゃはは、桃李君があんな子相手にするわけないのにねー」
「っ……」
それは、知佳ちゃんの言葉に舞い上がっていた私の気持ちを、どん底に突き落とすような悪意のこめられた声だった。
「っ……」
「愛梨……。気にすることないよ……」
「う、ん……」
知佳ちゃんが私の手をぎゅっと握りしめてくれる。
けれど、声はやむことなく聞こえてくる。
「だいたいさ、桃李君ってなによ。バカにしてるの?」
「ホントだよ。先輩のことを敬えってね」
「後輩のくせにねー」
先輩……後輩……。
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