「普通」なんかない

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 もう手立てがないと思いながら、鈴木は最後の、そして一番大きな抵抗を試みた。 「友沢には、分からないよ、俺みたいなやつの気持ちは」 「分かりませんよ。人の気持ちなんか」  まさかの一刀両断だった。鈴木は狼狽し、口を開けるも言葉が出てこない。 「それでも、理解したいって思ってる。いけないんですか? 俺、先輩のこと、分かりたいです。同情かどうかなんて、もうどうでもいいです。先輩が大切だし……好きです」 「……」 「俺、恋愛対象は女の子だから。また先輩のこと傷つけるかもしれません。ちゃんと理解できる自信もないし、やっぱ嫌だって思っちゃうかもしれない。先に謝っときます!」 「勝手すぎるだろ……」 「その時は、土下座でも何でもします。営業マンですし、そのへんは得意分野です。そんで、またトライします。先輩、知ってます? 相手の会社に仕事もらいたいなら、まず好きになること。失敗しても、諦めないこと。何度でも挑戦すること。営業入ってすぐ、習いました。……俺、先輩のこと、好きなんです。だから努力します。してみたいんです。先輩と」
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