思い出を下さい

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思い出を下さい

 勢いでやってしまって後悔することって、あるだろ?  なんで言っちまったんだって、ほんのちょっと前の自分が理解不能なこと、あるよな?  今の俺が、まさにそれ。冷静沈着が売りのはずなのに、どういうことなんだ。 「……あの、それ本気ですか、鈴木先輩」 「うぅ」  口に出してしまった言葉を消したい。何もなかったことにしたい。頼むから三分ほど巻き戻ってくれないかな。もちろん、そんな方法はない。分かっている。鈴木は自分の失態を思い知って、強く強く後悔していた。 『冗談だって。あるわけないだろ。ちょっと笑わせようと思ってさ。残業も大変そうだし、和ませようかなって』……いや、和むわけがない。
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