「普通」なんかない

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「大変そうだねって言っても、別に、って。でもほら、同期だし、なんか私に出来ることあればって言ったら、『自分の仕事は自分できちんとやるから』って言うの。思わず惚れるかと思ったわ」 「すごい、ですね」 「私もちゃんとしなきゃって思ったよ。友沢くんもさ、色々あるかもしれないけど、仕事がんばって。今日は私がおごるから!」 「い、いいですよそんな」  鈴木はきちんとしている。辛くても、仕事をして。それはもちろん社会人として当然のことだったし、友沢もそうだ。ふと、栄子の言葉が脳裏に蘇る。 『もう仕事辛すぎるー。辞めたいな。ていうか、辞める』  鈴木を尾行した日のあと、ようやく連絡がついた栄子は、友沢の説明を信じたのか信じないのか、ともかくも分かったとうなずいてくれた。そして、仕事を辞めると言い出したのだ。そんな無責任な、と友沢は思ったが、栄子を止められるほど元気じゃなかったから、何も言わなかった。 ――先輩は、きっと誰よりも傷ついていて。でもそれも誰にも気づかせなくて。  ストーカーまがいのことをした自分にも強い言葉を向けたけれど、それだけだ。もっとひどいことを言われても当然だったのに。本当は泣きたかったかもしれない。でも、平気な顔で。 「友沢くん」  思いに沈んでいた友沢は、課長に呼ばれて慌てて視線を向けた。 「そういえば、私一つ謝らなくちゃいけないんだ」 「え? なんですか」 「こないだ、ほら、友沢くんが酔っぱらっちゃった時」 「あの時は本当に」 「いいのいいの、もう謝らないで。その話をね、つい鈴木くんに話しちゃったんだ。ごめんね」 「はあ」     
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