「普通」なんかない

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「彼氏が半裸で女と抱き合ってたら誰でも誤解するよねーって言ってて、でも私が……ごめん、失礼なんだけど、友沢くんに前科があるのかなって言ったのね。前に浮気されてたら疑っても当然じゃない? そしたら鈴木くんが『友沢はそんなやつじゃないから』って。きっぱり。いい先輩だなあって思って」 ――先輩……。  心の中がじんわりと温まる。また、ヒロの声が聞こえた。『あの人を、人として、ちゃんと見てます?』  彼女と早く仲直りしなよね、と笑顔で言い残して課長は席を離れていった。励ましてくれたのだろうけれど、今の友沢には少し重たい。誤解だと繰り返したけれど、気まずさが残っている。ぎくしゃくしたまま、連絡する気にもなれず、忙しさにかまけてそれっきりになっている。栄子は本当に会社を辞めるかもしれない。その後はどうするんだろうか。相談もないし、こちらからも話したいとは思えなくなっていた。 ――俺は、どうしたいんだろうなあ。  ざわめく店の天井を見るともなく眺め、友沢は思いを巡らせていた。
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