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営業部には多くの人間がいるが、ここのところ立て続けに体調不良や産休が出て、人手が足りなくなっていた。友沢も、外回りから戻った後、書類を片づけるのに奮闘していたが、まだまだ先が見えないといった状況だ。数人の仲間と残業をこなしながら、友沢はしょぼつく目を強く押した。
「あー! 画面が霞んで見えない」
「……俺もですよ」
「私、肩がやばい」
「今日はもうやめましょ。帰りましょうよ」
「とは言ってもこれ明日の朝までにできてないとまずいからなあ」
ああ、と口々にため息が漏れる。友沢も凝り固まった肩をぐるぐると回し、首を鳴らした。
「とりあえず、夜食買ってきますわ。コンビニでいっすか」
「友沢さん、さすが、気が利くう」
「ありがとうございまーす!」
自分の気分転換にもなるからと笑顔で応えて、友沢は部署を出た。とにかく画面を見てばかりだった目が痛くて仕方ない。ようやく下りてきたエレベーターの扉が開いて、目を押さえたまま乗り込む。こんな時間には誰も乗っていないだろうと思いこんでいたのが、間違いだった。
「……友沢」
「えっ」
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