「普通」なんかない

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 カップも前と違うような気がしたけれど、鈴木の使うものはどれもシンプルなので確実に違うとは言えなかった。友沢はその白いカップでコーヒーを飲みながら、鈴木と雑談を始めた。相手の様子から、緊張していることが見てとれる。表情に出なくても、友沢には分かる。緊張がほぐれるまで少し時間を取り、関係のない職場の話などをしていた友沢だが、そろそろいいかと頃合いを見て座り直した。 「先輩、仲条さんと同期なんですってね。こないだ課長に聞きました」 「ああ」 「仲条さんが、課長になる時に男も女も関係ないからって先輩が後押ししてくれたって、言ってましたよ。尊敬してるって」 「そんな。たいしたことじゃない」  謙遜する鈴木に、友沢は首を振った。 「大事なことですよね。俺、考え直しましたもん」  鈴木は首を軽くかしげた。友沢は意を決して口を開く。 「先輩、今までたくさん傷つけてすみませんでした。ホント、俺は最低な男です」 「友沢」 「俺、先輩の思いにちゃんと応えたいんです」 「どういう意味だ」 「そういう意味です」 「無理だろ」  顔を背け、鈴木は即座に吐き捨てる。 「男同士だぞ、俺ら」 「男も女も関係ないんでしょ」 「それは仕事の話だ」 「俺は先輩を尊敬してますし」 「なんだ、そういう話か」 「それだけでもないです。俺……先輩が、他のやつを抱くのは嫌です」 「はっ! なんて自分勝手なんだ、お前」 「すみません」     
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